祭りで被災地に元気を取り戻したい
大船渡復興・東北三大祭り 実行委員長 甘竹勝郎氏
大船渡の人たちの心をひとつに
祭りは人々を元気づけるとともに、市全域に一体感を生み出すことをめざした取り組みでもあった。
「みんな大変だって思っているけれど、ひとつになろうという雰囲気がなかなかできなかったんですよ。たとえば、いろんな方が避難所に励ましに来てくださるけれど、『中心部にばかり行って、端のほうには全然来ない』という声もあったりして。誰が悪いわけではないんだけど、不満がくすぶっていましたね」
「なんで町ばっかり」。石巻で子どもたちの支援に取り組もうとしていたNPOカタリバの今村さんもぶつかった課題だ。
「来てもらったら来てもらったで、受け入れる人たちも疲れが見えてたんですよ。避難所や仮設にいる人たちは、支援を選ぶことはできない。せっかく来てくれたんだからと、言いたいことがあっても胸にしまって我慢してしまう」
受け身に回ってしまうのではなく、自ら楽しみに行こうとする場が、気持ちを発散させる場が必要だった。
「だから、私は市内全体を包括するように、みんなで盛り上がれるように、なるべく大きくにぎやかにやろうと思ったんです。いろんな人の力で、おかげさまで何とかかたちになりました」
甘竹さんは市長となる以前、船上で24時間討論会を開いたことがある。
「地域興しを寝ずに議論しよう、大船渡と言ったら海だから船の上でやろう、とね。根っからの祭り男だから。今回もね、みんなやるぞー!ってね」
まったくの手弁当の実行委員が集まり、力を貸してくれる地元の社会福祉法人や団体・企業も現れた。甘竹さんの思いは、一気に実現へと走り始めていた。