祭りで被災地に元気を取り戻したい
盛岡のさんさ踊り(写真提供:東海新報社)
培ってきたご縁とご厚意
震災から半年後の2011年9月。初めての大船渡復興・東北三大祭りにやってきてくれたのは、盛岡のさんさ踊り、秋田の竿燈まつり、青森のねぶたまつり。文字通り、東北の三大祭りの集結だった。
「市長を務めていたときのご縁をたどってね。ほんとうなら直接出向いて頭を下げなくてはいけないんだけど、失礼を承知で電話でお願いしました。それで来ていただけたんだから、ほんとうにありがたい限りです」
本格的な準備が始まったのは7月のこと。開催を急いだのは、一日でも早く元気を取り戻してもらいたいという思いのほかに、差し迫った理由があった。
「ホテルも流されてしまって、大人数で泊まれるところは公民館くらいしかありませんでした。冬だと寒くてとても無理だけど、9月ならなんとか大丈夫かな、と。それでも『いいよ』と言ってくださる方々でね。失礼ばかりで申し訳ないけれど、ご厚意に甘えさせていただきました」
費用はすべて先方の持ち出し。宿泊も公民館で雑魚寝。そんな状態で、快く引き受けてくれた方々には、感謝してもしきれないと甘竹さんは言う。
「もちろん、2年目、3年目は違って、時間をかけて準備していますよ。いつまでも甘えてばかりはいられないですから。それも1年目のことがあるから。あのときの感謝の気持ちは、絶対に忘れません」
そうした思いが通じたのだろう。一年目は、大船渡市の人口とほぼ同じ4万人のお客さんが集まった。
「秋田の竿燈は、翌日には大船渡の東の端にある崎浜っていう港町まで行ってくれたんですよ。これだけの規模の立派なお祭りが普段行くことはないから、地域のみなさんがほんとうに喜んで」
甘竹さんの思いから始まった三大祭りは、地元の人々の心をひとつにし、復興に向かってみんなの背中を力強く押している。