社会保障の視点からライフスタイルを問い直す

PHP総研コンサルティングフェロー・関西学院大学経済学部教授 上村敏之

女性の年齢階級別労働力率(内閣府男女弓道参画局
【女性の年齢階級別労働力率(国際比較)】内閣府男女共同参画局

◆定年制を廃止し、雇用の流動性で生産性と競争力を高める
 
 「まちづくり」のソフトの面で組み入れていきたいのは、新たな雇用形態である。現在、生活保護を受ける方が増えているが、その多くは、もともと年金制度に入ってこなかった高齢者である。これから彼らが職を得て働くことは極めて難しく、彼らに対する生活の保障は止むを得ないといえる。問題は、労働可能かつ意欲もある若年層で生活保護を受けている方が増加傾向にあることだ。その問題の本質は、財政を逼迫すること以上に、個人の社会参加を閉ざし、社会全体のあり方を不健全なものにするというところにある。
 
 この問題を解決するためには、社会全体で適材適所が行えるように、雇用のあり方をより流動的にすることである。勤労者だれもがいつでも学び直しができるよう教育・再教育の場を充実させ、人生のさまざまなライフステージや環境に応じて、ふさわしい働き場所が得られるようにする。
 
 たとえば、誤解を恐れずに言えば、現在の定年制を廃止して、有期の雇用契約を通じた労働移転の円滑化をはかるとともに、企業には、社員に再教育機会を保障する義務を課すといった方法が考えられる。また、その間の生活を保障する保険の仕組みも整える必要もあろう。肝心なのは、何歳でもその適性に応じて雇用が確保され、元気であれば、70歳を超えても活躍の場が与えられる社会的なしくみをつくることである。こうした雇用の流動化は、個々人に働き甲斐を提供すると同時に、能力活用の生産性を高め、企業の競争力を上げることになる。
 
 特に女性の就業の促進は重要である。日本は、他のOECD諸国と比べると、女性の「活躍度」がきわめて低い状態にある。これを高めることは、女性の自己実現の機会を増やすことにつながるばかりか、社会や経済の活性化をもたらす可能性がある。保育サービスの充実、社会保険制度や税制の控除制度の見直し、就労形態の柔軟化など、女性が働きやすい環境を早急に充実させねばならない。同時に、ワークライフバランスのあり方を見直し、男性も家庭内の仕事に今以上の時間を割けるように、勤労形態の変革を促進することも求められる。

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