いま求めたい「しくみ」を変える政治改革

政策シンクタンクPHP総研 研究主幹 永久寿夫

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政党のガバナンスを高める
 
 最後は政党を対象とする提言である。政党は、国会の構成メンバーであり、また内閣の構成メンバーともなりうる国会議員という政治家を中心とする集団であり、この組織のあり方によって、国会のあり方も政府のあり方も大いに変わる。したがって、政党の変革が、生産性の高い政治を実現するための要とも言える。
 
 提言の内容は、(1)組織・運営のあり方、(2)政策立案と実行、(3)党内教育のあり方、に分けられる。
 
 (1)組織・運営のあり方でもっとも重要なのが、首相となりうる党首のリーダーシップをいかに強化するかだ。具体策として、党首選と衆議院選挙もしくは内閣総辞職を連動させることが提言されている。政権交代とはかかわりなく、首相が頻繁に替わった原因の一つは、首相在任中に与党の党首選挙があり、党首の任期満了を理由に首相を辞任するケース(小泉首相)やその選挙に総理が敗退するケースがあったところにある。相応しくない人材が首相を続けることは避けねばならないが、首相が頻繁に替わるようでは、政府内における首相のリーダーシップや政府の国会への関与を制度的に強めたとしても、その効果は激減する。党内のリーダーシップを強化することが、政府における首相のリーダーシップ、さらには「強すぎる」国会に対抗するための前提条件なのである。
 
 また、政党の機能・運営に関するルール、すなわち綱領・基本理念、組織運営、意思決定プロセス、政策調査・立案、候補者選定、教育などのあり方が明示されていないことも、政党のガバナンスを弱め、政治の生産性を停滞させている原因であるとの指摘がある。民間企業が会社法などによって、設立、組織、運営及び管理のあり方を定められているように、国の経営を担当することを目的とする政党に対しても、ガバナンスを高めるため、政党法など法的なルールを定めるべきである。
 
 (2)政策立案と実行については、マニフェスト(政権公約)サイクルの確実な展開が求められる。マニフェストは選挙前に示される政党と有権者の間の約束である。したがって、実現可能性や検証可能性を担保したものでなければならないとともに、与党となった暁には政府と一体となって、あるいは少なくとも与党と政府間のルールを明確にし、その内容を政策の中に反映させていく努力を続けなければならない。また、実行のプロセスでは、状況の変化に即して機動的かつ弾力的に変更を加える必要もある。マニフェストの着実な実行、加えて臨機応変な対応が、政治の生産性を高めることにつながる。
 
 (3)党内教育で指摘されているのが、新人議員などを教育する場がなくなってしまったことだ。同じ選挙区で同じ政党の候補者が戦わなければならなかった中選挙区制時代には、各候補者は党内の派閥を頼り、また派閥は候補者や新人政治家の能力を高めるための教育を行ってきた。これが結果的に、党内の取りまとめという極めて重要な政治プロセスのなかでリーダーシップを発揮できる政治家を育ててきた。派閥を復活すべきというのではないが、政治家の指導力や調整力を高めるために、党内(国会内も含め)における教育の制度化が必要であるということだ。 

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