いま求めたい「しくみ」を変える政治改革

政策シンクタンクPHP総研 研究主幹 永久寿夫

Cs-34803

首相のリーダーシップを強化する
 
 次に、政府を対象とした提言である。その内容は、(1)首相のリーダーシップの強化、(2)政権移行のルール、に分けられる。
 
 (1)首相のリーダーシップの強化は、すべての提言において中心的なテーマとして取り上げられている。政府にとって最大の課題は、各省庁に分散する多種多様な政策や事業に、いかに戦略性と整合性をもたせるかという点であろう。政府が行っている事業の多くは、省庁間の十分な調整のもとで行われているわけではない。また、政務三役が頻繁に替わることもあり、政治主導で速やかに改廃するのも困難だ。これが無駄と停滞を発生させる原因であり、また改善が進まない理由でもある。
 
 こうした問題を解決するための方法として、首相直結の機関である内閣官房を改組・強化して新たな組織を各省庁の上部組織として創設し、組織横断的な政策・予算の企画立案や総合調整を行うべきとする。また、首相のリーダーシップのもとで各省庁の仕事が継続的に行われるよう政務三役の就任期間を延長すると同時に、官邸スタッフ、顧問、参与、諮問委員などの人選も、政権ごとに政策目標に対応させて行うべきとする。
 
 (2)政権移行のルールについては、具体的な提言というよりも、問題提起がなされている。民主党政権における苦悩の一つは、初めての政権運営ということもあり、そのノウハウに乏しく、また自民党の政権運営を否定しての政権奪取であったため、過去の経験を真似することもできなかったところにあった。今回、自民党が政権を奪還したが、今後また政権交代が起きないというわけではない。政治的空白を生じさせないためには、政権運営や政権移行のルールがづくりが求められる。

関連記事