道州制の実現には「本気」の取り組みが欠かせない

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 荒田英知

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永久:会場の方から質問があれば。ここまでの議論では、まだ自分の暮らしがどうなるかまでは実感できないように感じるが。
 
花粉症対策は中央集権より道州制が効果的
 
松沢:生活に直結する話題として、私は花粉症対策を公約に掲げた。花粉症は自然現象と思うかも知れないが、戦後の林野政策の失敗であり人災である。東京や横浜にくる花粉は丹沢、奥多摩、房総から飛んでくる。関東州なり首都圏州で取り組むことが合理的。中央集権と都道府県よりも、道州制がふさわしい。
 
会場(1):卒論で道州制を研究しているが、道州と基礎自治体の関係が分かり難い。
 
松沢:基礎自治体の充実は道州制をやる時の大前提。現在、神奈川県で最大の市町村は横浜市の370万人、一方で最小は清川村の3000人。同じ基礎自治体で1000倍も違う。このアンバランスのままでは、県から市町村に仕事を移したいと思ってもできない。そこで3つ目の政令市として相模原市の合併を応援した。市町村の体制を整えることで、県庁がなくなって道州に脱皮していくことができる。大きくなりすぎるという批判には、コミュニティ行政を充実させれば良い。
 
永久:私は横浜市青葉区に住んでいるが、あるシンポジウムで横浜市長に「横浜市は分割すべき」と発言したことがある。
 
会場(2):通貨発行権まで道州に渡す考えはあるのか。
 
荒田:道州制ビジョン懇談会の中間報告では通貨発行は国の役割としている。これには異論は少ないと思う。ただ、道州間の競争力の格差をどう調整するかという時に、地域通貨などで道州が一定の金融政策を講じるというメニューはありうる。
 
会場(3):現実に道州制論議を進めると「損得論」が出てくる。これをどう乗り越えるか。
 
松沢:道州制でも東京一人勝ちは変わらないという声は根強い。特にオリンピックフィーバーでその傾向が強まるだろう。その解決策の一つは道州の区割りを大きくすること。一般的に道州の数は10前後とされるが、私は5つか6つで良いと思う。太平洋と日本海の両方に面するようにするのが経済圏として望ましい。それが分散を生んでいく。また、道州制について、全国の知事は賛成と反対と様子見が3分の1づつ。官僚出身よりも民間や政治家出身の知事を増やすことが必要。

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