道州制の実現には「本気」の取り組みが欠かせない

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 荒田英知

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荒田:松下幸之助は廃県置州と同時期に「北海道独立論」を主張した。もし独立していたら、今以上に繁栄しただろうというのである。これを聞いた北海道の方々はポカーンとしたに違いない。しかし、北欧諸国の発展をみれば、この指摘は当たっているのではないか。北海道に限らず、中央集権の下では地域は国に依存する。その典型が地方交付税で、税収を上げたら交付税が減り、行革をして支出を切り詰めても減る。自分で頑張るインセンティブがないというのが、現状の最大の問題。
 
松沢:努力しなくても国からお金が来るというのが諸悪の根源。交付税や補助金で依存心ばかりになり、自立心を失っている。このままでは国力がどんどん損なわれてしまう。
 
永久:それが道州制になったら、良くなるといえるのか。
 
集権の単一モデルから道州の多様化モデルへ
 
荒田:上手くいく州もあるが、失敗する州もでるかもしれない。ただ、失敗したところは上手くいったところを真似して全体は底上げされていく。中央集権だとモデルは1つしかないが、道州の多様化モデルでは成功を競い合うことができる。
 
永久:失敗したら当面はどうなるのか。国からお金が出るなら今と変わらない。
 
宮島:失敗のリスクも含めて、道州制で不安に思うことがあるのは事実。日本人としてのナショナル・ミニマムは現時点では高い水準にあるので、これをどこまで維持するかは大きな論点になる。また、現状でかなり疲弊している地方に「委ねる」といっても、それで成功するイメージを持ち難いのではないか。一つひとつの心配を丁寧に議論していくことが必要。ただ、期待できるのは、最近の若い人は生まれ育った地域に根ざす傾向が、東京に出てきた私たちの世代よりも強いようだ。東京五輪でさらに一極集中が進むかも知れないという中で、地域を元気にする手立ては重要である。
 
藤村:今、「あいちトリエンナーレ」の一環で中京都や東海州をイメージした庁舎のデザインを進めている。配布資料に写真があるが、複数の模型を公開し来場者に投票してもらう。投票箱は名古屋市の選管から借りてきた。選挙以外にも、公共建築に対する意思表示の機会があることを示したかった。たとえば、中京都という大都市の庁舎と東海州の庁舎の床面積はどういう比率になるかを考えてもらう、あるいは名古屋のアイデンティティを考えてもらうことで、空間的なアプローチから大都市と道州の関係が理解されることを期待している。

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