地域の潜在力を発揮させるため、道州制に舵を切れ!

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 荒田英知

 今回言及した九州、北海道、沖縄の取り組みは、いずれも日本列島の周辺部に位置する地域からの発信であることが興味深い。「変革は辺境から」ともいわれるが、グローバルな視野で発想すれば、これらの地域は辺境どころか一大フロンティアなのである。
 
  他の地域においても、潜在力を生かした将来ビジョンを描くことで、地域住民も道州制に対するイメージを持ち易くなるものと考えられる。そして、ビジョンが求められるのは、なにも行政や議会に限らない。市民や学生がワークショップなどの手法を用いて、道州制時代の「わがまち」をデザインする試みも魅力的である。
 
  たとえば、建築家の藤村龍至氏は、現在開催中の「あいちトリエンナーレ」の一環として、東海圏の建築系学生に呼びかけ、「中京都庁舎」と「東海州庁舎」をデザインする作業を、展示会場でのプレゼンテーションと来場者による投票を繰り返しながら進めている。
 その狙いは、道州制だから巨大庁舎を造ろうということではなく、道州制が求める政治や行政と市民の関係はいかなるものかをみんなで考え、それを建築空間に投影しようというのである。
 
  道州制の実現には国民的理解が欠かせないとされる。道州制を自らのこととして受け止めようとするなら、まずは自分が暮らす地域の将来像を考えてみることが近道であろう。各地域が主体的に道州制時代の将来ビジョンを描き、それらの集大成として新しい国のかたちづくりが進むことを期待したい。
 

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