地域の潜在力を発揮させるため、道州制に舵を切れ!
これまで、経済界、知事会、市長会が進めてきた九州における道州制の取り組みは、議会の参画によってさらに厚みを増したといえる。現在は、セミナー開催や広報誌の発行により、九州各県議会に会員の拡大を図っている段階であるが、住民代表としての議会が、道州制に対する理解を深めることで、道州制の意義が九州各県の住民レベルまで浸透していくことを期待したい。
北海道は自主独立の精神を発揮できるか
九州と並んで、道州制で大きく変貌するであろう地域に北海道がある。弊社は、地域主権型道州制における地域ビジョンの第一弾として2011年に「北海道経営ビジョン」を発表した。これは弊社の創設者である松下幸之助が、1967年に「北海道独立論」を提唱したことに由来する。
松下は「もし北海道が独立国であったなら、いま以上に発展しているに違いない」と、自主独立の気概を持つことの重要さを説いたのである。そこで北海道経営ビジョンは「依存から自立へ」を基調に、「3つの基本理念」、「基本理念にもとづく8戦略」、「ビジョンを実現する21政策」、「戦略シナリオ(工程表)」を提言した。
21政策のうち、北海道ならではの取り組みとして、開拓の歴史に立ち返り「フリーゾーンと減税で、起業と投資と移民を増やす」。国際競争力を高めるため「地域通貨を発行し、独自の金融政策を実施する」。地の利を生かして「ロシア極東圏との交流を進める」。いまや日本有数のコメどころとなったことから「道産米をフル生産し、農水産品を世界に売り込む」。広大な空間にスプロールした都市機能を「人口減少を睨んで福祉・介護のコンパクトシティ化を進める」。人口と諸機能の集中する札幌市が、北海道全体を支えることができるよう「新たな大都市制度を適用する」などがある。
いずれも既存制度の枠を大きく乗り越えることで、北欧諸国にも伍していくような地域経営を行い、北海道の新たな発展につなげようとするものだ。
それでは現実はどうか。2006年に地理的にはすでに道州の単位を先取りしている北海道を対象に、道州制を先行的・モデル的に実施する「道州制特区推進法」が成立。北海道からの提案に基づき、国から地方への権限移譲を個別の法令改正によって実現していくことが可能になった。