地域の潜在力を発揮させるため、道州制に舵を切れ!
しかし、残念ながら、その進展は芳しくない。これまで移譲された権限は、調理師免許の一元化や鳥獣捕獲の許可手続きの簡素化など、限定的、断片的で北海道の自立性を飛躍的に高める改革になっているとはいい難い。民主党政権のもとでは検討も足踏み状態が続いていた。今般の道州制基本法案の動きを受けて、北海道の道州制特区は仕切り直しを迫られている。提言をヒントにして、道知事をはじめとする道内の政治家や官僚が、従来にない大胆な発想で北海道の未来を考えてもらいたいものである。
単独・特例型を志向する沖縄の道州制論
もう一つ、道州制の地域ビジョンを巡っては沖縄の動きに触れないわけにはいかない。沖縄には琉球王朝の時代から受け継がれる「万国津梁(ばんこくしんりょう=世界の架け橋)」という地域像がある。
現代にそれを具現化する取り組みが、2009年から那覇空港を舞台に始まっている。それは那覇空港を国際貨物の中継基地にし、国際物流拠点にしようとするものだ。時差を生かして日本とアジア各国間の貨物の到着時間を従来よりも早めることに成功し、貨物取扱量は短期間で成田、関空に次ぐ規模に躍進した。
沖縄振興は国にとっても重要な施策であるが、近年、沖縄で振興策を議論する際に「魚ではなく釣竿を与えよ」という言葉が語られる。これは、補助金などの“魚”ではなく、自ら稼ぐことのできる道具が欲しいとの意味である。その究極の道具として沖縄が自ら選択したのが道州制である。
道州制議論が進む中で、沖縄の人々は「九州・沖縄」が一体の区割りではなく、地理的特性を生かした「沖縄単独州」が望ましいと考えた。それを訴えるため、関係者による「沖縄道州制懇話会」を組織し、沖縄単独州を目指す理念・目的と、国と沖縄単独州の役割分担について検討。2009年には、沖縄州の設立方法や機構も盛り込んだ「沖縄の特例型道州制に関する最終提言」を取りまとめている。
沖縄には、固有の歴史や米軍基地問題など他の地域とは異なる事情があり、結論に至るには幅広い議論が必要である。しかし、道州制時代の地域の立ち位置を明確にし、発信しいくことの重要性は他の地域も同じであろう。沖縄の取り組みは、道州制論議に際して、地域がいかに意見表明していくかの先例としても参考にすべきといえる。