地域の潜在力を発揮させるため、道州制に舵を切れ!

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 荒田英知

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 九州モデルは、制度の側面からも道州制に移行した場合の国と地方の役割分担や道州制を実現するための税財政について独自の検討を行なっている。そこで示された基本原則は、時期を前後してまとめられた政府の「道州制ビジョン懇談会 中間報告」とも共通点が多い。地方側から率先して調査・研究し発信・提言していくことが、国の制度設計に一定の影響を与えうるという意味で、九州モデルの取り組みは、今後、道州制の制度設計が本格化する中で、地域が取り組むべき方向性を示している。
 
 
九州モデルが基礎自治体や議会にも波及
 
  具体的な将来ビジョンを示した九州であるが、それが広く住民レベルにまで浸透し道州制に対する理解や期待が広がるためには、取り組みの裾野をいっそう広げることが求められる。九州モデルが呼び水となって、基礎自治体や議会にも取り組みが広がっているのが、九州の動きの特徴でもある。
 
  その一つは、九州市長会が2009年にまとめた「九州府実現計画」である。九州モデルにおいても、道州制の中で基礎自治体の役割が大きく高まることが指摘されていた。しかし、九州には政令指定都市がある一方で過疎地も多い。そこで九州各県29市の職員が研究会を組織し、手作りで基礎自治体像をまとめたのがこの報告書である。
 
  そこでは、道州制時代の基礎自治体は「人口規模に関わらず、住民生活に直結するすべての事務事業を自己完結的に担う必要がある」との観点から、基礎自治体のあり方について、自治体規模に応じた4つの類型を示している。
 
  道州制において、身近な住民サービスを提供する主役として基礎自治体の役割はさらに高まる。その時の基礎自治体のあり方について、当事者側が将来像を描いたのはこれまでに例がない。自分の住んでいるまちが4類型のどれに当てはまるか考えてみることで、道州制時代の地域イメージが膨らむだろう。
 
  もう一つの取り組みは議会から生まれた。2011年に福岡県議会の主要4会派が申し合わせて、会派や政治的立場を超え、さらに行政と民間の垣根を乗り越えて、九州が一つにまとまり、新しい時代、新しい日本をつくるために設立した「九州の自立を考える会」である。設立趣意書には、「将来の道州制も視野に入れ、地方主権の推進や九州の成長戦略づくりに関する研究を進めていく」とある。

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