希少性を生かした「稼ぎ方」から考える

金丸恭文(フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長/グループCEO)×磯山友幸(経済ジャーナリスト)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

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3、普段は見逃している希少性に価値を探す
 
永久 AIなどの技術革新によって、人間のやる仕事が限定的になっていくと、今の日本の教育の内容、やり方でいいのかと疑問に思います。そのあたりは、どうお考えですか?
 
金丸 国語と算数、理科、社会の基礎的なものは、将来どういう分野へ行くかわからないので、ある一定程度はやらなければいけません。とくにおろそかにしてはならないのは、日本の歴史。個人的にはもっと詳しく京都の歴史は知っておくべきだったと思っています。それに、アニメも知っておいたほうがいいですね(笑)。なぜなら、日本の歴史やアニメなどは国際的に知られているし、それらを通じて日本に関心を持っている人がたくさんいます。だから、我々も知っておかなければなりません。今度弊社に入社するアメリカ人は、大学時代に1度日本に来ただけで日本語はもうぺらぺらなんですよ。さらに、内定してから入社するまでに、簿記2級をとることを要件としているのですが、漢字の専門用語も出てくる試験を日本語で受けて合格しました。東大、京大、早稲田、慶應の学生なんか、けっこう落ちて内定取り消しになっちゃうんですけれどね。
 
永久 それはどういうふうに理解したらよろしいでしょう。「日本のことをもっとちゃんと知らなければいけない」ということですか、それとも、日本人の若者、我々も含めてかもしれませんが、ハングリー精神みたいなものを持たなければならないということですか?
 
金丸 ハングリー精神というよりも、我々の周りには、普段は見逃しているけれど、付加価値や希少性が存在しているということです。具体的には田舎の出身であればあるほど、それ自体が希少性なんだから、それをもっと大切にしていくと、世界に通用する価値にもなりうるということです。例えば、デンマークが意識しているのは、世界の若者とデンマーク人の若者が競争するというイメージなんですね。だから「世界の人と競争した時に、ITリテラシーでコンプレックスを持つデンマーク人はつくらない」という教育方針を掲げているんです。ITリテラシーが高ければ、それを駆使して、新しいサービスを創造することになるかもしれないし、アートを作り出すかもしれない。
 
磯山 日本はいまだにタブレットを配る、配らないのレベルですよね。
 
金丸 電子書籍なども普及すると、本の文化がなくなるとか言っていますよね。
 
磯山 そんなものに抵抗していてもしかたがないと思うし、紙もデジタルも「境目がない」と認識すべきだとも思うんですけど。
 
金丸 経済圏の空間が、サイバーとリアルな世界の合体になったということですよ。リアルの世界だけに閉じたビジネスモデルは、サイバーと組み合わせたモデルにはかないません。その好例がアマゾンじゃないですか。日本にすでにあったロジスティックとサイバーを組み合わせて新しい小売りの仕組みをつくったというのがすごいところです。
 
磯山 我々は、素材は持っているのに、それをうまく料理できていない。

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