希少性を生かした「稼ぎ方」から考える

金丸恭文(フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長/グループCEO)×磯山友幸(経済ジャーナリスト)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

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5、今の制約の中でもできることはたくさんある
 
永久 そうした社会から脱却するには具体的に何をすべきでしょう。
 
金丸 私は今、鹿児島県の三島村(注:硫黄島・黒島・竹島の3島からなる村)に高校をつくってあげたいと思っているんです。サイバー上の高校です。授業はどこかの高校の授業をそのままネットで流してあげればいい。
 
磯山 予備校みたいなものですね。
 
金丸 そうすると、フェリーに乗って鹿児島市に行って、下宿代払って高校に行く必要がなくなる。さらに、大学もバーチャルでサイバー上の教育が受けられるようにする。
 
磯山 ところが、高校とか中学の定義というのは、運動場がなければいけない、といった物理的な要件が文科省によって設置されている。
 
金丸 でも三島村は、島全体が運動場みたいなものです。山があり海がある。そういう発想がなぜ持てないのかと、文科省に言ってるんですよ。まずは、こうした具体的な事例をつくらないと先に進まないと思うんです。
 
磯山 ここがまた国際交流を深めようとしていますよね。しかも、アフリカのギニア共和国がお相手ですよね。
 
金丸 そうなんです。ギニア共和国にジャンベという太鼓の「神様」と呼ばれる人がいて、この人を日本が呼ぼうとしたんです。そしたらその彼が「自分はギニア共和国でも小さな村の出身なので、私が交流するなら、候補の中で一番小さい村に行きたい」と言って、三島村を選びました。さらにそこでジャンベの国際大会が開かれ、シャンベのスクールまでできた。村は補助金を出して、このスクールへの半年留学という制度までつくりました。そのおかげで、この村に移住する人が増えているんです。今後、病院、教育、介護などの問題をAIやIoTが解決していけば、三島村はその希少性で国際的にも価値を持つところになるはずです。
 
永久 ということは、別に法律や制度が悪いなどと大騒ぎせずに、やれることはやっちゃえばいいということですよね。
 
金丸 日本の自治体はあちこちの国の自治体と姉妹都市になっていますよね。でも、ほとんど名前だけじゃないですか。それを実のあるものにすべきなんです。鹿児島はオーストラリアのパースが姉妹都市ですが、そこの市長が鹿児島に来て、貿易と経済で繋がりたいと提案したそうです。例えば、畜産だとパースで和牛の子牛を育てて、それを日本が買い、黒毛和牛のブランドで売るというコラボレーションが可能ということがわかった。すでに鹿児島県の有望な畜産家は、TPPの準備完了とのことです。
 
磯山 今の制約の中でも可能性があちこちにあるということですね。
 
金丸 実は、やれることをやってないんですよ。にもかかわらず、だめな理由を政府とか公のせいにしちゃって、大企業も含めておねだり合戦しているわけです。
 
永久 それでいうと、国から地方にお金が流れる仕組みがずっと続いているわけじゃないですか。それが地方や企業をスポイルしているとも言えますね。
 
磯山 地方交付税交付金という仕組みが、基本的に自立を妨げていると思います。だから、思い切って一回やめたらいい。
 
永久 そうした議論をずっとしているのですが、なかなか進まない。
 
磯山 むしろ今、地方税を国税化するほうに逆行していますからね。最悪ですよ。
 
永久 「新しい働き方」から切り込んでいくと、税制や地方分権、道州制といった統治制度の変革の議論まで到達しますよね。というか、行かないといけない。
 
金丸 ええ、行かないといけないですね。

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