安定財源の確保と税金の投入先の見直しを

林宏昭(関西大学経済学部教授)×上村敏之(関西学院大学経済学部教授)

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6.借金は自分で負担するのが大人の責任
 
上村 今後の財政再建を進めるには、先ほど歳出削減と成長が効果的と言われましたが、増税についてはどうですか。
 
 必要だと思います。消費税への依存を高めたとしても、経済成長で消費はそれほど増えません。少なくとも今年必要なものについては、消費税以外にも、みんなでちゃんとお金を出しましょうということです。
 
上村 そういう意味では、国と地方の借金をせめて塩漬けにして、プライマリーバランスの均衡をはかっていくことが重要ですね。プライマリーバランスはサービスに見合った負担をするという意味ですからね。
 
 それが大人の責任ですね。大きな借金をつくっておいて、それを返すのは若い人たちです、とは言えないでしょう。
 
上村 なるほど。成長も大事だし、増税も大事だし、削減もしないといけない。
 
 ただ、成長はどれだけ期待できるのか。僕らが子どものときは、ようやく一家に一台テレビが行きわたった時期で、さまざまなものが登場し、それを欲しがった。成長するのは当たり前です。いまの学生に何が欲しいと尋ねたら、「時間」と返ってくる。渇望感がないんです。それで成長するのかどうか。
 
上村 歳出削減についてはどうですか?
 
 民主党の事業仕分けでは10何兆という削減目標が設定されましたが、それは無理です。全体の10%以上も削っていいような国家予算をつくる政治家を、これまで何十年も選んできたとすれば、有権者は総懺悔しなくてはなりません。削減できても、数千億程度でしょう。一方の消費税は1%で2兆円以上の額です。消費税を上げなくてもいいという議論は、無責任に見えます。
 
上村 ただ、歳出の中身を見ると、怪しい予算はありますよね。当初予算で削られたものが、補正予算で結構復活したりします。特に補正予算は全然チェック機能が働いていません。
 
 自治体でも同じで、予算のときはものすごく力を入れてやるのに、決算はいい加減。
 
上村 決算は終わったことのチェックが重要です。そこから学び、それを当初予算に活かすことができていない。議会もマスコミも当初予算に注目しがちですよね。決算を検査する会計検査院も明らかな無駄しか切り込めないですね。
 
 やり様はいくらでもある。それを有識者に投げるのではなく、本来は議会が行うべきなのです。

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