安定財源の確保と税金の投入先の見直しを

林宏昭(関西大学経済学部教授)×上村敏之(関西学院大学経済学部教授)

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上村敏之氏(関西学院大学経済学部教授)

2.安定財源確保には所得税にも着目すべし
 
上村 今回の税制大綱と当初予算をどのように評価をしますか。今年は2010年を基準としたプライマリーバランス赤字の半減が目標となる年で、当初予算では一応、それが達成されるようです。財政再建が進んでいるというアピールになっているでしょうか。
 
 予算規模はこれまでで一番大きく、その背景にあるのは税収増です。今回、円安でさまざまな影響はありますが、景気がよくなっているところは増えていますからね。
 
上村 税収増の要因は基本的に所得税と法人税。法人税のほうは景気変動でかなり大きくなりますが、今回の税制改革で法人税率を下げるとなると、景気変動による税収増は今後見込めなくなりますね。所得税のほうはどうでしょうか。
 
 安定財源を消費税だけに頼る必要はありません。消費税アップには「弱者」「低所得層」への配慮が必要だと言われますが、その範囲は曖昧です。所得税ならはっきりしますね。あとは金融所得課税が他国と比べると低く、お金持ちが優遇されていると言えます。
 
上村 一体改革では、消費税だけに焦点が当たっていますが、所得税にも見直しが必要ということですね。今回の税制改正大綱で、消費税の軽減税率が今後の検討課題となりました。一杯300円の牛丼でも100グラム1万円の松坂牛でもこれが適用されたら、低所得者対策ではなく、高所得者優遇になるという話もある。これについてどう評価しますか。
 
 軽減税率は避けて通れないと思います。反対する人のなかでも、10%段階では要らないという人と、そもそも軽減税率はおかしいという人がいます。10%のままとどまるのであれば私も必要はないと思います。標準税率をどこに設定するかですが、10%で止まるとは思えません。軽減税率はヨーロッパはもちろんアメリカにもあり、庶民に支持されています。これがあるから、標準税率が20%くらいに上がっても我慢できるわけです。
 
上村 ただ、軽減税率の対象を決めるのは結構難しいですよね。
 
 生鮮食料品だけでいいと思います。生肉はかけないで、焼いたらかかる、というのはややこしいとも言われますが、アメリカなどではできていますよね。外食も雰囲気とかサービスなどの付加価値の部分が大きいので、対象外でしょう。
 
上村 軽減税率を設けると税収ロスがでるので、標準税率についてちゃんと議論しないといけませんね。

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