政治の分岐点で有権者が判断すべきこととは

政策シンクタンクPHP総研 研究主幹 永久寿夫

 
<教育制度> 実効ある責任体制を確立する
 
 昨年社会問題となった大津市のいじめ事件をきっかけに、責任の所在が不明確という指摘がなされ、教育委員会制度改正が検討事項としてとりあげられるようになった。教育再生実行会議が行った教育長を責任者に位置づけるという提言は、現状追認にとどまっており「責任体制の確立」という制度改正の目的に合致しているとはいいがたい。制度改正の目的を達成するには責任を「首長に集約」させる選択が妥当である。これによって教育行政と予算の責任が一元的に集約されるからである。
 
<対中政策> 紛争を管理可能なレベルに抑制する慣行をつくる
 
 中国との関係をどうしていくかが現在の日本外交の最大の眼目である。尖閣問題については、法的な隙間を埋めるとともに、海上保安庁や自衛隊の能力向上と連携強化をはかることが不可欠である。さらに日米が戦略的視座を共有し、共同演習などの具体的な行動により強制的な現状変更を座視しない姿勢を見せるべきである。また、他国とルール形成で連携することや、それらの国々の拒否能力を高めることも積極的に推進していかねばならない。こうした複合的かつ実効的なヘッジ策を背景とし、紛争を管理可能なレベルに抑制していく慣行を日中間で作り出していかねばならない。
 
<防衛政策> あるべき姿について見識を競う
 
 安倍政権は民主党政権期につくられた防衛大綱を見直す方針だが、なぜそれが必要なのか、主要な変更点はどこかを明示すべきである。5月末に自民党の国防部会と安全保障調査会が発表した防衛大綱の見直しについての提言には、策源地攻撃能力の検討や自衛隊への海兵隊機能の付与、集団的自衛権の検討、自衛隊の人員・装備・予算の大幅拡充、といった内容が含まれている。こうした点について論議を深めつつ、防衛・安全保障のあり方はどのようにあるべきか、各党の見識を競い合うことが不可欠である。

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