政治の分岐点で有権者が判断すべきこととは
<歴史認識> 中国や韓国に利用させない
閣僚の靖国神社参拝や歴史認識に関わる有力政治家の発言は、国際的に波紋を呼び、中国や韓国のみならず、米国からも強い懸念が寄せられた。中国は、尖閣問題での日本の姿勢を第二次大戦後の戦勝国秩序への挑戦と位置づけるなど、新たなかたちで歴史認識問題を持ち出しており、「過去を反省しない日本」というイメージをつくらせないよう、責任ある立場の人々は言動に慎重を期する必要がある。安倍内閣は、「靖国」をなるべく政治・外交問題にしない、歴史認識については歴史家に任せる、という姿勢を貫くべきであるし、野党は、歴史認識問題で政権を追い込もうとすべきではない。日本が半世紀以上にわたって侵略を否定し、基本的人権を守り、民主主義を維持してきた国であるという事実を強調することこそが、政治家の務めであろう。
<道州制> 懸念と危機感を払拭する
道州制に関しては、自公み維の4党が基本法案の早期国会提出で一致していたが、秋の臨時国会に先送りされた。その理由は、道州制が国主導型になるのではないかという懸念とさらなる合併を迫られるのではないかという危機感が地方に存在し、自民党内で慎重論が出たからである。道州制は、地方も国も効率的で生産的な政治・行政を実現するための大改革である。まずは、そうした懸念や危機感を払拭するために、道州が国の出先機関ではなく広域自治体であることや、市町村間の水平連携ならびに府県が町村に対して果たしている垂直的補完・支援機能を道州に残すことを明示し、道州制基本法を早期に成立させなければならない。
<憲法改正> 改正要件のほかに議論すべきことがある
一部の政治家が憲法改正の発議要件の緩和を主張しているが、自民党の中においても、安倍総理の持論を含め意見が複数あり、議論はまだ熟しているとは言えない。そもそも日本の改正要件は特段に厳しいというわけでもないし、これまで具体的な条項の改正に向けて発議を行おうという高まりがあったわけでもない。いま政党が優先すべきは、改正要件の先行改正というよりは、現代社会において憲法の何が問題で、どの条項をどうすればよいのかという点を具体的に打ち出し、それを憲法審査会で徹底的に議論し、その内容を国民に向けて問うことである。
以上