政治の分岐点で有権者が判断すべきこととは
歴史問題で隙を見せてはいけない
ただし、こうした動向が実効性のある提携を自動的にもたらすわけではない。中国は世界経済のあらゆる側面において極めて大きな存在となっており、多くの国々は、中国の拡張主義的傾向に懸念を抱きつつも、自らの重要利害が明白に侵害されないかぎり、率先して対抗しようとはしない。日中が衝突して、どちら側に立つか迫られる事態も避けたいというのは、米国でさえ例外ではない。
このような状況では、歴史問題での対応が、日本の立場を不必要に悪くする恐れがある。日本が戦後国際秩序に挑戦しているという中国の主張は荒唐無稽だが、日本側から歴史修正主義的な動きが出てくると、事情通でない限りどっちもどっちと見るようになる。北朝鮮問題を抱える韓国にとって、日韓の連携は望ましいものの、日本との関係改善で中国を刺激するわけにはいかない。米国も、中国への過度な挑発は避けたく、米国が明確に日本の側に立たない言い訳として、この問題が利用される可能性もある。地球儀を俯瞰した戦略的外交や価値観外交を成功させるには、第三国の複合的な中国観をふまえて注意深く進めるとともに、歴史問題などで日本が隙をみせないことが肝心である。
<政権運営>
高い合意形成能力で政策を進行
民主党政権と第二次安倍政権の違いは党内での合意形成能力を含めた指導力にある。アベノミクスの政策決定にもスピード感があったが、党内で意見対立があったTPP問題について、情勢をみきわめて政権としての方針を短期間で確立し、交渉参加決定にまで持ち込んだ力量は際立っている。官邸、各省庁、与党の連携プレーで重要政策を処理していくプロセスで、菅義偉(すが・よしひで)内閣官房長官などの個人的な手腕が発揮されていると考えられるが、一方で民主党政権時代の組織や制度を改変することによって、国家の中枢機能の強化や政策のスムースな実現をはかっていることも見逃せない。