米国の新しい核戦略と「核の傘」

金子将史 ((株) PHP総合研究所 国際戦略研究センター長 主席研究員)

Talking Points

  • 2010年4月6日、米国国防省は、今後5-10年の核戦略を規定する「核態勢見直し報告書(Nuclear Posture Review Report:NPR2010)」を公表した。
  • NPR2010は、「核兵器なき世界」を長期的に目指して具体的な措置をとりつつ、核兵器が存在する限りは、抑止や同盟国の保証に必要な安全、安心、効果的な核兵器を維持する、というオバマ大統領の方針の下、米国政府内外での困難な過程を経て策定された。
  • NPR2010は、核テロや核不拡散を最優先課題ととらえた上で、軍備管理・不拡散レジームの重視、核兵器の役割限定、新型核兵器や核実験の断念といった方針を示す一方、核兵器の構成・規模は大きく変更せず、通常兵器能力の強化、核兵器の信頼性維持のための各種プログラムやインフラの増強を打ち出した。
  • NPR2010が日本に対する拡大抑止に与える影響として、「核兵器の役割限定」「核戦力の見直し」「通常兵器重視」「中国との戦略的安定性追求」「不拡散レジーム重視」「核兵器の信頼性問題」、を考慮する必要がある。
  • 今後、「中国の核戦略の位置づけ」「日本の態度と米国の核政策の相互連関」「拡大抑止についての日米協議の制度化」「米国の核運用政策の動向」「日米の全般的に良好な関係」について、特に留意すべきである。
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