トランプ政権と対米ヘッジング─ダイナミックスとシステム・インパクト─

山本吉宣 (新潟県立大学大学院国際地域学研究科長、政策研究センター教授/PHP総研研究顧問)

Talking Points

  • トランプ大統領の対外政策は不確実性に満ちたものである。こうした不確実性に対処する各国の行動をヘッジング概念で分析し、政策処方箋を描く試みが広く行われるようになっている。
  • ヘッジングは、望ましくないことが起きる可能性を低下させる政策、それが実際に起きてしまった時の対処政策、の2 つから成る。
  • 「望ましくないこと」には、相手が攻撃的な行動をとる場合と、相手がいままで供給していた国際公共財の供給停止をする、という2 つの行動が考えられる。前者に対するものをタイプA、後者に対するものをタイプBのヘッジングという。
  • トランプ大統領の政策に対しては、タイプB のヘッジングが必要である。アメリカが公共財を停止する可能性を避ける政策と、実際に公共財を停止・縮小した時の対処政策の2 つを考えなければならいない。
  • 前者には、日米の役割分担を進め同盟の絆を強くする多角的なシステムを維持する施策を取ることが含まれ、日本が当面とらなければならない政策である。
  • 後者は、アメリカからの自律化をはかる政策を考えることであるが、このような政策を全面的に押し出すことは、アメリカの離脱をさらに助長することになろう。
  • 日本は、中国の台頭に対応して、タイプA のヘッジングを展開してきたが、いまやそれに加えて、アメリカに対してタイプB のヘッジをしなければならない。複雑なヘッジング(マルティプル・ヘッジ)である。
  • このような状況に鑑み、体系的、長期的な観点から新総合安全保障政策ともいうべきものを考えるべきであろう。
トランプ政権と対米ヘッジング─ダイナミックスとシステム・インパクト─

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