観光関連税制の現状と経済学的論点─宿泊税・入湯税を中心に─

飯田泰之(明治大学政治経済学部准教授)
前田順一郎(公認会計士・税理士)

Talking Points

  • 近年、全国の自治体において入湯税の引上げや宿泊税の導入が議論される機会が増大している。本稿ではこれらの観光に関する税を観光関連税制と総称し、その経済学的な特性の整理を通じて合理的な制度設計にむけての提言を行う。
  • 観光関連税制の導入・拡大は、観光振興の財源にあてるべく議論されている例が多い。他方で、我が国の地方公共団体による観光振興予算の大部分は一般財源から確保されてきたため、一般財源からの観光関連支出削減や一般財源としての活用を目指した導入・拡大が検討されているケースも少なくない。その使途・負担の対応関係を明確化する試みが必要だ。
  • 近年のもうひとつの特徴である定額化から定率化・累進化への変化を正当化するためには、その税収を観光客・宿泊客の満足度を高める使途で用いることが求められる。
  • 海外における先行研究を概観すると、観光関連税の需要に与える影響は無視し得るものではない。税の導入・拡大は地域の観光産業に負担を与える。この負担を上回る経済効果をもたらすような観光振興施策が行われなければ、観光関連税が地元観光関連業者の理解を得ることはできないだろう。
  • 福岡県や北海道の事例にみられるように、都道府県、市町村のいずれが観光関連税の課税主体となるかの議論は今後も増加すると予想される。この議論の際にも、税収の使途が考慮されるべきであろう。使途の決定において受益と負担の対応関係を明確にすることは、課税主体の決定・分担を考える上でも有益である。同時に、当該地域の観光地としての特性も十分に斟酌すべきである。
  • 全国的に活発化する観光関連税制の導入・拡充にあたっては、その経済学的な論点を精査した上で各地域への導入を検討するとともに、合理的な制度設計を目指す必要があろう。
観光関連税制の現状と経済学的論点─宿泊税・入湯税を中心に─

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