ポストサブプライム時代の地方財政ガバナンス体制
Talking Points
- サブプライム・ショックによる世界経済の激変を経て、地方自治体は景気回復を受動的に待つことなく、臨時財政対策債を含めた地方交付税制度や「暗黙の政府保証」による地方債制度など地方財政システムの持続可能性を検証し、自ら財政規律の維持向上に取り組まなければならない段階を迎えている。
- バブル崩壊から「失われた20年」の間に進展した地方分権と金融制度改革は、「役所の論理」と「市場の原理」とを接近・融合させた。2006年の「夕張ショック」は地方自治体の無謬性神話と安全性神話を崩壊させ、地方自治体がマーケットに対してリスクを有する主体であることを露呈させた。
- 地方自治体の政策・施策の動向は、地方債の流通実勢やCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)、地方債の格付けといった形で、さながら「リアルタイム行政評価システム」として日々刻々と数値化・差別化され、マーケットでの売買に反映されている。
- 地方自治体の基本構造を議論する中で、これまでの常識や枠組みを超えて、金融工学を駆使した公民連携手法、地方自治体ファイナンスの民間化・市場化、複式簿記・発生主義による新たな公会計制度など自律的な財政規律の維持向上機能をビルトインした新たな庁内ガバナンス体制と地方財政システムを構築していくことが急務である。