的確な指針示した「新安保懇報告書」
―民主党政権は提言を活かしうるか―

金子将史 ((株) PHP総合研究所 国際戦略研究センター長 主席研究員)

Talking Points

  • 今年末「防衛計画の大綱(防衛大綱)」の見直しに向けて、8月に有識者懇談会が発表した最終報告書は、日本の安全保障政策と防衛力のあり方について的確な指針を示している。
  • 第一に、本格的武力侵攻の可能性は低いと明言し、複合事態や周辺有事、サイバー攻撃といった多様な事態、周辺地域の安定化やグローバルな安全保障環境の改善に高い優先順位を与えた。
  • 第二に、基盤的防衛力構想を放棄し、動的抑止力を重視することを提言し、防衛力整備の達成目標を示すなど、規律力のある方向性を示している。
  • 第三に、日米防衛協力の中での日本の役割拡大、米豪との協力強化、能力構築支援や防衛援助等を通じた信頼醸成にとどまらない防衛協力の推進など、他国とのパートナーシップについての適切な方針を示した。国内の連携強化ついても、オール・ジャパン体制の構築や内閣レベルの基盤整備に言及している。
  • 第四に、有識者懇談会方式の限界に言及し、防衛力整備に限定されない安全保障戦略の策定を求めるなど、防衛大綱策定過程について注目すべき問題提起を行っている。
  • 第五に、日本のアイデンティティを明確にすることにとりくみ、「平和創造国家」と表現した。
  • 政局は不安定だが、報告書が示した大枠を踏襲し、具体的な防衛政策、防衛力整備計画に反映させていくことが肝要である。
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