〔特別寄稿版〕 第一次大戦から100年 中国の台頭と日・ベルギー関係の展望

片山和之 (在ベルギー日本国大使館公使)

Talking Points

  • ベルギーは中世以降欧州の中心に位置し重要な位置を占めてきた。北方のフランドル地域と南方のワロン地域の経済格差を含む歴史的な確執がある一方、EU本部やNATO本部があり、欧州の過去と将来を眺めるのに絶好の場所である。
  • 日・ベルギー関係は、修好通商航海条約締結以来、約150年の外交関係がある。両国皇室と王室のつながりも深い。第一次大戦時には、ドイツの侵略に奮闘しているベルギーに対し、同じ連合国の一員として日本国内では、義援金募集が行われた。
  • 第一次大戦勃発から終戦100周年を近く迎える欧州各地では、各種の記念行事が催される。日本は、連合国の一員として参戦し、欧州戦線では、英国やフランスの植民地から欧州へ向かう輸送船の護衛を請け負った。日本として、第一次大戦時の「貢献」を祝賀乃至追悼するような性格のものではないかもしれないが、気にかかるのは中国の動きである。
  • 中国も連合国側で参戦し、14万人にも上る労働者を欧州に派遣した歴史が、最近になって掘り起こされた。中国人が欧州のために汗や血を流した歴史が、政治的に利用されることがないか見守っていく必要があろう。
  • 現在、ベルギーは日本の貿易相手国として21番目、ベルギーにとり日本は9番目である。ベルギー進出日系企業数は260社を、在留邦人数は5300名を超える。しかし最近は中国の経済進出が勢いを増し、日本経済の相対的な地位は低下気味である。
  • Japan Expoでみられる日本文化のソフト・パワー、スマート・パワーも活用しながら、ベルギーにおいて日本が中国と如何に差別化を図っていくか。中国が代替することのできない日本の独自性と存在感を如何に高めていくかが、今後の日・ベルギー関係ひいては日欧関係において問われていくことになろう。
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