スマート化する都市と第4世代(4G)地方自治の展開

伊藤敏孝 (神奈川大学 指定管理者モニタリング・評価研究所  客員教授/ファイナンシャルプランナー)

Talking Points

  • 2012年5月、原子力発電所の全停止により、130年弱の歴史をもつ日本の電力供給システムは再考を余儀なくされた。火力中心となれば、地球温暖化対策における温室効果ガス削減効果が低減するが、都市のスマート化を実現する各要素技術は抜本的なライフスタイル転換の可能性を秘めており、これをコモディティ化することがリスクフリーなエネルギー対策実現のカギとなる。
  • バブル崩壊以降の「失われた20年」において、複数のリスク要因と不確実性が交錯したボラタイル(volatile)な社会経済情勢が続いている。「役所の論理」と「市場の論理」とが密接不可分となったポストサブプライム時代では、安全神話や性善説を前提にした従来型の制度設計によるシステムの脆弱性への対応強化が急務となっており、エネルギー問題の勃発によって頂点に達した。
  • 近代的自治制度が導入された1888年の市制町村制制定から120年余、2000年の地方分権一括法施行以降の地方自治は「第3世代」と称される。過去3度の大合併と地方分権の進展という大きな流れの中で、市町村数は約1,700となった。大都市域での二層制に関する昨今の新たな議論の隆盛は、エネルギー需給構造と地方自治の統治構造に対するストレステストの連立方程式への解となりうる「第4世代(4G)」地方自治システムを指向している。
  • 第4世代(4G)地方自治の制度設計では、ICT及び金融工学の進展によりブラックボックス化した構造的リスクへの対応や、様々な不確実性のストレステストに耐えうる強固なリスクヘッジ策が欠かせない。分散化・平準化・多様化・可視化を前提とした多重防護型への移行、地域特性を活かした地域最適と全体最適との両立、都市のスマート化による時間最適と次代最適の実現が重要となる。
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