中国の台頭と国際秩序の観点からみた「一帯一路」

山本吉宣 (新潟県立大学大学院国際地域学研究科長、政策研究センター教授 PHP総研研究顧問)

Talking Points

  • 習近平国家主席が唱える「一帯一路」は、1) 陸路と海路の2つを併せ持つ、2) AIIB(アジアインフラ投資銀行)、シルクロード基金という巨大な財政資金に裏打ちされている、という特徴を持つ。
  • 陸路は、西安から中央アジアを通ってヨーロッパに至り、海路は、福建から、南シナ海、インド洋、アフリカ東岸をへてヨーロッパに至る広大なものである。
  • 「一帯一路」は、エネルギーなどの確保、中国経済の減速を補うための国外市場の開発、投資の促進を目的とし、新疆など西部の開発、国内の格差の是正によって国内政治の安定を図ろうとするものである。またインド・太平洋とユーラシア大陸の双方でのインフラ網を作り出すことによって、中国の地政学的な地位は向上することになろう。
  • 中国は「一帯一路」に関してインフラ網の整備だけではなく、政策協調、障害なき貿易、通貨の安定を目的に掲げており、自らが主導する国際秩序を作ろうとしている。中国は、国際公共財供給国として自己を位置づけるようになっている。
  • 「一帯一路」をめぐる政治は、中国の外貨蓄積を分配するというバラマキ政治(分配の政治)、中国の地位・影響力を向上させようとする競争の政治(再配分の政治)、ルール・メーキングの政治が複雑に絡まったものである。
  • 日本は、「一帯一路」の展開を慎重に見極めつつ、開かれた国益の観点から、中国を国際的なルール・規範に沿うようにするとともに、国際公共財の供給、その自由な使用を保証するルールの確立をめざす政策を展開すべきである。
policy_v9_n70

本文を読む
PDF

View more

注目コンテンツ