2023年版 PHPグローバル・リスク分析

PHP総研グローバル・リスク分析プロジェクトは、来たる2023年に日本が注視すべきグローバルなリスクを展望する『2023年版PHPグローバル・リスク分析』をまとめ、このたび発表いたしました。

本レポートは、日本の利益に即してグローバルな政治と経済の連関がもたらすリスクに着眼するユニークな分析として、第1回目の2012年版以来、政府関係者や企業経営者から高い評価をいただいています。今回の2023年版で12回目のレポート発刊になります。

ロシアによるウクライナ侵略は、自分たちが当然視している合理性をもとに情勢判断するあやうさを白日の下にさらすことになりました。戦争の帰趨は今なお不透明ですが、ロシア・ウクライナ戦争が示す力関係の現実やその過程におけるダイナミズムが、これからの国際秩序のありようを左右することは間違いないでしょう。

米国中間選挙と中国共産党大会を経て、今日のパワー構造の基調をなす米中の戦略的競争は国内政治とも相互作用しながら、多元的に構造化しつつあります。他方で、民主と専制という単純な図式には収まらない、多様な利害を有するいわゆるグローバルサウス諸国の動向が国際秩序に新たな次元をもたらしていることにも注意が必要です。

今後の世界を規定するエネルギー・グリーン領域において中東があらためて中心性を発揮しようとしていることに、エネルギーを同地域に極度に依存する日本はもっと敏感でなければならないでしょう。ウクライナ戦争で弱体化するロシアが、国際政治の複雑で多面的なゲームの攪乱者としてふるまう可能性も見逃せません。

折しも低金利、金融緩和を前提とする時代が去り、気候変動や破壊的テクノロジーとあわせて経済社会のパラダイムも大きく変わろうとしています。政治の論理と経済の論理の相互作用は再び変質することになるでしょう。本レポートでは「見落としリスク」や「unknown unknownsのリスク」を取り上げましたが、こうした時代には現状バイアスを意識的に排する努力も今まで以上に必要となります。

『2023年版 PHPグローバル・リスク分析』をぜひご高覧いただき、世界の現実を冷静に見つめ、危機の時代に立ち向かうための一助にしていただければ幸いです。

〔NEW〕

英語概略版”PHP Global Risk Analysis 2023“を公開しました。(2023年2月7日)

Global Risks 2023

  • 1. 国際秩序再編で攪乱要因となる「弱りゆくロシア」
  • 2. 米露影響力低下で再編進む中東秩序と取り残される日本
  • 3. 対露エネルギー制裁で深まる三重の分断
  • 4. 低インフレと超金融緩和の終焉がもたらす世界マネー動乱
  • 5. 再び露呈する核抑止パラドックス
  • 6. 中国がロシア・北朝鮮と引き起こす同時多発的な緊張の高まり
  • 7. 振れ幅大きい米国(Volatile America)に振り回される世界
  • 8. 新冷戦で崩壊する中露依存の欧州成長モデル
  • 9. 現実世界に直接的な影響を与え始めるサイバー脅威
  • 10. 繰り返される「見落としリスク」
  •  
  • 【コラム】「武器と戦闘員の拡散」というウクライナ戦争の「副作用」
  • 【コラム】「ディストピア」からのリスク分析の意義

PHP総研グローバル・リスク分析プロジェクト

畔蒜泰助
(あびる・たいすけ)
/笹川平和財団主任研究員
1969年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。モスクワ国立国際関係大学国際関係学部修士。東京財団研究員兼政策プロデューサー、国際協力銀行モスクワ駐在員事務所上席駐在員等を経て現職。専門はロシアを中心とするユーラシア地政学、ロシア国内政治。著書に『「今のロシア」がわかる本』(三笠書房・知的生きかた文庫)、『原発とレアアース』(共著、日経プレミアムシリーズ)、監訳書に『プーチンの世界』(新潮社)がある。
飯田将史
(いいだ・まさふみ)
/防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室長
1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。同大学院政策・メディア研究科修士。スタンフォード大学修士(東アジア論)。専門は中国の外交・安全保障政策と東アジアの国際関係。スタンフォード大学と米海軍大学で客員研究員もつとめた。著書に『海洋へ膨張する中国』(単著、角川SSC新書)、『中国―改革開放への転換』(共編著、慶應義塾大学出版会)、『チャイナ・リスク』(共著、岩波書店)、『中国は「力」をどう使うのか』(共著、一藝社)等がある。
池内 恵
(いけうち・さとし)
/東京大学先端科学技術研究センター教授
1973年生まれ。東京大学文学部イスラム学科卒。同大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。専門はイスラーム政治思想、中東地域研究。著書に『現代アラブの社会思想―終末論とイスラーム主義』(講談社)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社)、『シーア派とスンニ派』(新潮社)など。『イスラーム国の衝撃』(文藝春秋)で2015年度の毎日出版文化賞・特別賞を受賞。2016年度の中曽根康弘賞・優秀賞を受賞。『フォーサイト』(ウェブ版、新潮社)で連載「中東危機の震源を読む」と「池内恵の中東通信」を担当。
大場紀章
(おおば・のりあき)
/エネルギーアナリスト / ポスト石油戦略研究所代表
1979年生まれ。京都大学理学部化学科卒。同大学理学研究科博士課程単位取得退学。民間シンクタンク勤務を歴て現職。株式会社JDSCフェロー。経済産業省「クリーンエネルギー戦略検討合同会合」委員。専門は、化石燃料供給、エネルギー安全保障、次世代自動車技術、物性物理学。著書に『シェール革命―経済動向から開発・生産・石油化学』(共著、エヌ・ティー・エス)等。
柿原国治
(かきはら・くにはる)
/航空自衛隊航空開発実験集団司令官 空将
1964年生まれ。防衛大学校卒、筑波大学院地域研究修士、米国防大学国家安全保障戦略修士。財団法人世界平和研究所主任研究員、航空自衛隊幹部学校長等を経て現職。著作に、『弾道ミサイル防衛入門』(金田秀昭著、執筆参加、かや書房)、「安定の鍵としての対中カウンター・バランス―柔軟抑止・同盟抑止の実効性向上に向けての一考察」(『アジア研究』Vol.60(2014)No.4)、「米国の戦略岐路と新相殺戦略」(『海外事情』2015年2月号)等。
金子将史
(かねこ・まさふみ)
/政策シンクタンクPHP総研代表・研究主幹
1970年生まれ。東京大学文学部卒。ロンドン大学キングスカレッジ戦争学修士。松下政経塾塾生等を経て現職。株式会社PHP研究所取締役常務執行役員。専門は外交・安全保障政策。著書に『パブリック・ディプロマシー戦略』(共編著、PHP研究所)、『日本の大戦略─歴史的パワー・シフトをどう乗り切るか』(共著、PHP研究所)、『世界のインテリジェンス』(共著、PHP研究所)等。「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」議員、外務省「科学技術外交推進会議」委員、国際安全保障学会理事等を歴任。NPO法人岡崎研究所理事。公益財団法人松下幸之助記念志財団評議員。
菅原 出
(すがわら・いずる)
/政策シンクタンクPHP 総研特任フェロー
1969年生まれ。アムステルダム大学卒。東京財団研究員、英危機管理会社勤務を経て現職。著書に『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』(講談社現代新書)、『戦争詐欺師』(講談社)、『秘密戦争の司令官オバマ』(並木書房)、『米国とイランはなぜ戦うのか?』(並木書房)等がある。安全保障・テロ・治安リスク分析や危機管理が専門。邦人企業や政府機関等の危機管理アドバイザー、NPO法人「海外安全・危機管理の会」代表理事、国際政治・外交安保専門オンラインアカデミーOASIS学校長をつとめている。
田島弘一
(たじま・こういち)
/株式会社日本格付研究所調査室長
1952年生まれ。千葉大学人文学部法経学科卒。信託銀行で国際部門、運用部門を経験、証券では経営向け調査を担当、同時に国際金融情報センターのシニアアドバイザーを兼務し現在に至る。カーターショック、オイルショック、プラザ合意、ブラックマンデイ、バブル崩壊、不良債権問題、金融危機、同時テロ、リーマンショックなどを身近で経験したことから、政治、軍事、外交、経済、金融、市場はジグソーパズルとみて、金融インテリジェンスの実践者として活動しながら、政策提言活動も続けている。
中島精也
(なかじま・せいや)
/福井県立大学客員教授
1947年生まれ。横浜国立大学経済学部卒。ドイツifo経済研究所客員研究員(ミュンヘン駐在)、九州大学大学院非常勤講師、伊藤忠商事チーフエコノミストを経て現職。丹羽連絡事務所チーフエコノミストを兼務。著書に『傍若無人なアメリカ経済─アメリカの中央銀行・FRBの正体』(角川新書)、『グローバルエコノミーの潮流』(シグマベイスキャピタル)、『アジア通貨危機の経済学』(編著、東洋経済新報社)等がある。日経産業新聞コラム「眼光紙背」と外国為替貿易研究会「国際金融」に定期寄稿。
名和利男
(なわ・としお)
/サイバーディフェンス研究所専務理事・上級分析官
1971年生まれ。海上自衛隊において護衛艦のCIC(戦闘情報中枢)の業務に従事した後、航空自衛隊において信務暗号・通信業務/在日米空軍との連絡調整業務/防空指揮システム等のセキュリティ担当業務に従事。その後JPCERTコーディネーションセンター早期警戒グループのリーダ等を経て現職。他複数の役職を兼務。専門分野であるインシデントハンドリングの経験と実績を活かして、CSIRT構築及び、サイバー演習の国内第一人者として、支援サービスを提供。現在サイバーインテリジェンスやアクティブディフェンスに関する活動を強化中。
馬渕治好
(まぶち・はるよし)
/ブーケ・ド・フルーレット代表
1958年生まれ。東京大学理学部卒。マサチューセッツ工科大学スローンスクール経営科学修士。米国チャータード・ファイナンシャル・アナリスト(CFA)。(旧)日興證券等を経て現職。国際経済・証券金融市場分析が職務。著書に、『ゼロからわかる時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)、『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版)、『投資のプロはこうして先を読む』(日本経済新聞出版)、『コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法』(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊「十字路」の執筆担当者のひとり。
保井俊之
(やすい・としゆき)
/広島県立叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部学部長・教授
1962年生まれ。東京大学教養学科卒。国際基督教大学博士(学術)。米国PMI認定PMP。研究テーマは社会システム、ソーシャルデザイン、ダイアローグと協創、システム×デザイン思考等。財務省・金融庁等、米州開発銀行日本他代表理事を経て、2021年より現職。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別招聘教授を兼務。著書に『「日本」の売り方―協創力が市場を制す』(角川oneテーマ21)、『中台激震』(中央公論新社)、『体系 グローバル・コンプライアンス・リスクの現状』(共著、きんざい)、『無意識と「対話」する方法』(ワニプラス)等。地域活性学会理事兼学会誌編集委員長、日本創造学会評議員、PMI日本支部理事、ウェルビーイング学会監事。

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