PHP「人新世の国際政治」研究会
激甚災害や異常気象の多発、パンデミックと温暖化の関連性の指摘などを背景に、地球環境危機への意識は世界的な高まりをみせており、政府も企業もグリーン・シフトを余儀なくされています。なかでもEUはグリーンディールを推進し、「サーキュラーエコノミー」を打ち出すなど、環境分野でのルール形成を主導しようとしています。バイデン政権発足後の米国も莫大なグリーン投資で主導権を回復しようとし、日本や中国をはじめ多くの国々がカーボンニュートラルを掲げるなど、各国はグリーン政策に本腰を入れつつあります。
経済や社会のグリーン・シフトは人類の生存や持続可能性をかけた取り組みであると同時に、産業や社会の中長期的な競争優位性や国家間のパワーバランスの優劣を左右しうるでしょう。折しも覇権や影響力をめぐる大国間の競合が本格化し、コロナ禍を経て国家間の対立や相互不信は増幅しています。地球環境問題への対応は人類の生存に関わる課題ですが、こうした権力政治のダイナミズムをふまえなければ、絵に描いた餅に終わるでしょう。
本研究会では、気候変動をはじめとする多様な地球環境課題とそれへの対応(グリーン・シフト)が、権力政治といかに相互作用するかを、経済・産業はもちろん、政治、外交、軍事、開発、科学技術、社会、思想にいたる多面的な観点から検討し、「人新世」における国際政治の全体像を示します。大国間競争の中にあってもグリーン・シフトを可能にする諸条件、その中で日本が果たしうる役割について考え、日本が人新世の国際政治におけるメジャープレイヤーとして建設的な影響力を発揮するための方策について提言します。