2020年は「選択する寄付」元年になる

日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾雅隆 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

 
3、誰もが社会貢献の先生になれる
 
 
鵜尾:ファンドレイジング協会で8月頃に向けて準備している話もあって、社会貢献のアクションポータルサイトを立ち上げようと思っています。たとえば、子どもたちがクラスメイトや自分より年下の子たちに社会貢献教育をすることになったら、自分ならこうやって教えるといったアイデアを考えたり、Youtube用に映像を創ったりしてもらって、それを投稿してもらう。そこにほかの学校の子たちから「いいね」がつくと、ランクが上がるとか。つまり、みんなが先生になるような感じです。
 
 あるいは自分たちが考えた社会貢献活動をアップできるとか。私たちが「これが正解です」と教えるんじゃなくて、みんなが考えた答えをどんどんアップして共有しあえるサイトをつくろうというプロジェクトを準備しています。そのための原資も確保できたので、8月立ち上げ予定です。
 
 子どもたちはみんな本当にクリエイティブで、たとえば高校生が「ファースト寄付」というタイトルで寄付の体験を高校生同士が語るイベントがありました。「初めての寄付」だから「ファースト寄付」なんですが、なんとなくやわらかいニュアンスになりますよね。寄付を語るお芝居をやってみたり、4コマ漫画で表現するワークショップをやってみたり。そういうクリエイティブな活動をどんどんオンラインで共有して、全国の各学校のボランティア部の子たちが自分たちの学校でやったことをアップして、といった連鎖をつくっていくことができれば、勝手に誘発されていくような気がしています。
 
――教える、教えられる、ではなく、学び合いの場をつくるという感じですね。
 
鵜尾:誰もが先生になれるのがおもしろい。そこにゲーミフィケーションの理論で、ある種の競争性も取り入れていこうと思っています。「いいね」やコメントをほかの学校の生徒ができるような仕組みにして、誰がいちばん閲覧されているか、どのプロジェクトがいちばん人気があるかというランキングをつけると、みんな宣伝したり拡散したりするので、そういった仕掛けもしていこうと思っています。その中に他の団体で取り組んでいるプログラムも挙げてもらって、いろんなところのいろんな動きをワンストップで見られる場にしたいと思っています。
 
 Learning by Givingの子どもたちに託すモデルも、たとえば10校で実施したら、そのときの子どもたちの体験を映像にまとめて子どもたちにアップしてもらうとか、子どもたちに記事を書いてもらってアップしてもらうというのもこのサイトでやろうと思っています。
 
――自分たちはこんな議論を経てこんな風に考えて、ここを選びましたということが共有されるのはいいですね。
 
鵜尾:そうした能動的な発信をするというか、それを思いついたのもコロナでボランティア部の子たちが部活が全然できていないという話を聞いてからです。2019年の自分たちの社会貢献の活動をオンラインでおもしろく発信するということはできるわけですから、それに対していろんな人から問い合わせを受けたり、評価されたりすることを競ってもらうのも面白いんじゃないかなと思ったんです。「オンラインで社会貢献教育を競う」といった、コロナ時代ならでチャレンジができないかなと思っています。

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