制度と現場の全体像を知る強みを活かした貢献
慎さんのインタビュー第一回はこちら:「社会の変化と見直される役割」
――ご著書『ルポ 児童相談所』では、児童相談所の課題についても解決策を提言されています。
慎:児童相談所については、国による外部監査の仕組みをつくれたらと思っています。
「新しい社会的養育ビジョン」の中で私が貢献したことがあるとすれば一時保護の分野で、この検討委員会でも全2回を一時保護の議論に割いています。殆どの人が実態を知らない一時保護についてこのように議論がされたのは、社会的養護に関する議論の歴史で初めてのことなんです。里親や施設に関する議論はずっとされてきましたが、一時保護についてはそうではなかった。
――私はそもそも一時保護所というものの存在を知りませんでした。
親元での養育が最善でないと判断された子どもは、まず児童相談所によって保護されますね。そうした子どもたちが、自宅に戻ったり、施設や里親に委託されたりするまでの間滞在するのが、児童相談所に併設された一時保護所であると。
一時保護所での滞在期間は平均して1か月ほどということですが、その間の生活は自由が大きく制限され、学校にも行けないというのは驚きでした。また、保護所間格差が大きく、そこでの経験がトラウマになるような、子どもの意思や権利に配慮がされてない保護所も少なくないということですね。
慎:一時保護所とともに、一時保護をつかさどっている児童相談所の情報が社会に対してより開かれたものになれば、状況は変わっていくと思っています。
具体的に私が必要だと思っているのは、児童相談所が厚生労働省に対して提出しているデータの項目を増やすこと。それによって、その児童相談所のパフォーマンスが分かるようになります。
もうひとつが、第三者による監査の仕組みをつくること。格付けみたいものですね。上場会社に格付や時価総額のようなものがついて、それによって世の中の人々は会社の状況を知り、投資の判断材料にしたりしますよね。それと同じような、外から状況が見える仕組みをつくりたいんです。
――となると、監査を行う第三者は外部の機関が望ましいということですね。
慎:私が強く申し上げているのは、監査は絶対に国直下の組織でやってほしいということです。実は、児童相談所や児童養護施設には第三者による監査が既に存在していますが、監査を行っているのは民間の団体なんです。地元の児童相談所から監査報酬を受け取って監査をするのでは、厳しいことを言うのが難しくなりがちです。そういう活動は国がやるべきです。
児童相談所の第三者評価機構を、地方自治体ではなく、厚生労働省の直下組織として設立する。そうしたもののデザインや組織の分析は仕事でずっとやってきたことですから、私が役に立てる分野でもあると思っています。