社会の変化と見直される役割

認定NPO法人 Living in Peace 理事長 慎泰俊 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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――そうした10年間の大きな変化の中で、Living in Peaceの果たしてきた役割はどのようなものだったのでしょうか。
 
:私たちが何かしたからということではないのかもしれませんが、マイクロファイナンスのフォーラムを開いて投資を呼びかけた後、関心をもった金融機関の方々が次々に情報収集にいらっしゃるようになりました。
 
 NPOというのは社会課題のリサーチ機関のようなもので、社会課題を見つけて、それに対する解を試しにつくってみて、うまくいったらいろんな人に応用してもらうように広く問い掛けていくという役割があるのだと思います。Living in Peaceはマイクロファイナンスの分野でそれをずっとやってきたわけですが、マイクロファイナンスがビジネスとして成立していて、投資対象となりうるということを示せたと思っています。人の役に立つことで、お金もちゃんと返ってくるんですよ、ということが、当たり前のような感じになってきた。ですから、マイクロファイナンスについては、次にすべきことを探す段階にきているという状態ですね。
 
 社会的養護についても、私の話を聞いて初めて課題の存在を知った政治家の方や経営者の方もけっこう多かったように思います。たまたまG1サミットという場に参加させて頂いていて、そこでずっと呼び掛け続けてきたことを聞いていただくことができ、社会的認知を高めていく、目の前の課題を解決するという役割を、ある程度きちんと果たしてこられたかなと。
 
 2枚目の名刺を持つということに関しても、そういう特徴を持った団体として認知されてきたと思いますし、これまでに取材していただいたメディアの数などを考えると、相応の役には立ってきたと言えると思います。
 
 ですから、10年間の活動全体を振り返って見ると、最初に設定した「2枚目の名刺」「マイクロファイナンス」「社会的養護」というテーマは外れてはいなかったと思いますし、よい方向性で認識されてきて、課題が解決に向かうめどがついてきたというところです。
 
――マイクロファイナンスに関しては、2014年に「五常・アンド・カンパニー」という会社を起業されています。Living in Peaceのマイクロファイナンス事業と、どのように棲み分けをされているのでしょうか。
 
:五常はマイクロファイナンス機関に出資して子会社化して、自社の事業として現地の経営に深く関わりながらマイクロファイナンスを行っています。子会社の株を売却する予定は基本的になく、組織形態も株式会社で、投資案件の規模も大きいです。
 
 Living in Peaceは、経営にそこまで深くかかわりません。日本にいる大勢の個人からお金を集めて、期限付きで1件数千万円の投資をするという形態です。
 
 このように、五常はエクイティ、Living in Peaceはデット性の資金を提供するという住み分けをしています。また、コンフリクトが起きないように、五常とLiving in Peace が関わる会社は完全に分けています。

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