「見えないリスク」を見つけるマーケティング的アプローチ

NPO法人 OVA 代表理事 伊藤次郎 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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――国も自殺の理由の統計をとっていますが、OVAで実際相談を受けられていて、若者が死にたいと考える理由には、どんなものが多いですか?
 
伊藤:これは非常に答えが難しくて、たぶん一番正確な答えは、「答えはない」あるいは「マルチファクターである」というものだと思います。なので「これさえやればよい」という特効薬のような自殺対策はないので、「あれか、これか」ではなく「あれも、これも」やるしかありません。
 自殺に追い込まれている一人ひとりをみても、いろんな問題を抱えているケースが圧倒的に多いんです。これさえ解決できればという問題がひとつあるというより、人間関係から生活状況、健康問題と、いろんな問題に圧倒されて、身動きがとれない、もう死ぬしかない、という状態になっていることが多い。まるでひとりで真っ暗闇のトンネルの中にいて、ずっとそこから出られないような絶望や強い孤独を感じている相談者が多いように感じています。
 
――自殺の要因は人によってそれぞれということもあるし、逆に言うと、一人の人がさまざまな要因を抱えているということですね。それが全部ぐちゃぐちゃになって、わからなくなる。
 
伊藤:そうですね。だからメールをいただいて最初にすることは、話を聞いて、つらい気持ちをうけとめながら、複雑に抱えている問題を整理していくということです。そして大きな問題から優先順位をつけて、「この問題は、こういう人や機関に相談すると解決できるかもしれないから」と現実に支援機関につなげていくというのが、我々の活動です。
(第二回<2月28日(火)公開予定>へ続く)
 
OVAでは「こころのインフラ」創造を目指して、クラウドファンディングに挑戦しています

生きづらさを抱えた若者のSOSをテクノロジーを用いて受けとめ、命を守りたい

https://camp-fire.jp/projects/view/19421
 
伊藤 次郎(いとう じろう)*NPO法人OVA代表理事。1985年生まれ。学習院大学法学科卒。
 企業のメンタルヘルス対策を請け負う人事コンサルティング会社を経て、精神科クリニックにて勤務。2013年に日本の若者の自殺状況への問題意識から、リスティング広告を活用した自殺ハイリスク者へのアウトリーチ活動を開始。翌2014年にNPO法人OVAを設立。
新宿区自殺総合対策会議若者支援対策専門部会委員(平成26年・平成27年・平成28年)、
江戸川区自殺未遂者支援会議 スーパーバイザ-(平成27年・平成28年)。日本財団「ソーシャルイノベータ―」選出(2016)。
 

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