商品を通じて、エネルギーと応援を届けたい

かものはしプロジェクト 共同代表 青木健太 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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――単なるチャリティではなく、商品としての質にもこだわりつつ。
 
青木:それは前提ですね。日本のある調査で見たのですが一度でもフェアトレード商品をそう認識して買ったことがあるという人がだいたい世の中の12%でした。しかも購入の理由はフェアトレードだからというよりは、商品が気に入ったから。そのあとは予想ですが、継続して商品を購入する人はそのうち10%程度ではないでしょうか。
 つまり「フェアトレードだから」「チャリティだから」という理由だけでは、数少ない一度目はあっても二度目はない。だから、商品を気に入って買ってくれた人たちに、フェアトレード的な価値観を伝えて共感してもらうという順番でなければいけません。
 だけど、いいものをつくるということにこだわるのは、そういうマーケット上の理由というよりも、僕たちがやっている事業のど真ん中にある譲れない信念だと思っています。
 どういうことかきちんとご説明すると、まず、僕たちがやっている事業って、架け橋だと思うんですね。最貧困層の女性たちは、教育もあまり受けていないこともありなかなか資本主義社会についていけない。発展する都市部の仕事に入って行けなくて、キャリアを広げていくことができない。じゃあ農村に仕事が沢山あるか・経済が回っているかというとそんなことはないわけです。だから僕たちは、コミュニティファクトリーを彼女達にとっての資本主義社会へのやさしい入口として使ってもらいたいんです。いきなり資本主義社会まっただなかの工場に入って活躍するのは大変だという人であっても、コミュニティファクトリーで僕たちと一緒に2年間働いて学べば卒業した後にそういう工場の中で活躍できるよというかたちで、彼女たちと社会の架け橋になりたいと思っているんです。
 そういう前提の中で、じゃあ「社会に出る、社会で活躍する」とはどういうことかと改めて問い直すと、人に価値を提供するということだと思うんですね。人に価値を提供するからお金がもらえたり、コミュニティへの所属を承認されたりするわけですよね。
 僕らNPOやNGOの活動では、彼女たちを「受益者」と呼びがちです。だけど、僕たちは彼女たちが単なる受益者のままでいるうちはだめだと思っていて、人に価値を提供するプロデューサーになっていかなければいけないと思っています。ただ受け取るだけでは、絶対に自立できないから。
 
――受益者からプロデューサーへ。
 
青木:人に価値を提供できているということは、提供したもので喜んでくれる人がいるということ。それによって初めて、自尊心や自立心といったものが育まれると思うんです。
 支援で陥りがちなのが、「君たちは教育を受けられなかったんだから、品質が悪いのはしかたないよ。お客さんは商品の質よりも、君たちのバックグラウンドに興味があって買ってくれるんだから、大丈夫だよ」という、間違った優しさです。そんな商品の在庫が積み上がっていくのを見て、作り手が「これつくってよかった」なんて思えるわけがないですよね。自分たちがつくった商品を選んで、喜んで使ってくれる人がいるって信じられるから、彼女たちは社会とのかかわりをつくっていける。だから、いいものじゃなくていいという選択肢はないんです。いいものじゃない商品を売るのは、こっちも辛いですから。
 

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