小学校4年生から39歳まで支え続ける

認定NPO法人 育て上げネット 工藤啓 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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――ジョブトレとサポートステーションが、無業状態にある若者本人へアプローチする事業ですね。育て上げネットでは、保護者向けの支援にも取り組まれているそうですが。
 
工藤:「母親の会・結(ゆい)」では、お子さんの不登校、ひきこもり、就職活動の不調といった状態に悩みや不安を感じている保護者の方へのサポートに取り組んでいます。基本的には母親向けですが、父親やご家族の方も利用できます。個々の状況によりますが、現在の状況整理、家族関係の改善やお子さんが社会に向けて踏み出せるまでを保護者に寄り添って行っていきます。
 
――「コミュニケーションの取り方はこうしたほうがいいですよ」といったアドバイスをされたりするんですか?
 
工藤:そうですね。必要に応じてさまざまなご助言をさせていただきます。専門の相談員がそうしたアドバイスをしたり、同じような悩みをもつ保護者同士でグループワークをしたり、遠方の方向けにはスカイプで相談を受けたりしています。
 
――本当にひきこもっている人は、外部との接触を一切絶っているので、そもそも捕捉できないとよく言われていますね。また、最近では、ひきこもり状態にある人々の高年齢化と、ひきこもり期間の長期化が指摘され、両親が定年などで収入が維持できなくなったり、亡くなったりした場合にどうするのかといった懸念もよく聞かれます。
 
工藤:自立を促すために自宅外に押し出す/引き出す支援もありますが、それは公的な支援基盤が整備されていなければ、ひとりでいきなり生きてはいけません。むしろ、本来社会的に整備されるべき基盤部分をご家族が背負ってしまっていると認識しています。私たちが相談を受けるケースの多くは、家で両親と同居しています。ひとは本当に困ってしまうと手や声をあげることができません。そのため、両親をはじめとする家族や親族、ケースワーカーの方など、ご本人の居場所を知っているひとの存在が大変重要になります。
 本人が「相談に行きたい」とアプローチしてくれたらそれがいちばんいいんですが、それができる人はすでに行動しているので、いかに本人と出会うかが私たちのような活動の肝です。ですから、この事業は「保護者支援」と言っていますが、ひきこもり状態にある人が社会とつながるために、保護者を経由してアプローチをかけています。
 必要な場合はご家族とご本人の同意を得たうえでご家庭に訪問にも行きます。ご本人が「家に来てくれるなら会ってもいい」とか、「家の近くのファミレスでなら会ってもいい」と言ってくださるようであれば、何度でも会いに行って、「よかったらこういう場所があるよ」「家から通うのが嫌だったら、宿泊設備のある場所もありますよ」といった話をしながら、社会との接点作りを進めていきます。ご両親が年金生活に入ったり、精神的にも限界にきているという話もお聞きします。高齢化したひとたちのサポートについての議論はもっと進めていかなければならない社会的な課題であるという認識です。ただ、現状知り得る限りでは具体的な公的サービスは多くないですし、民間での取り組み情報もあまり聞きません。法人のミッションとしてはなるべく早い段階でアプローチできるための取り組みを加速させていきたいです。

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