「共感×解決策」の掛け算で社会を変える

日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾雅隆

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――日本でNPO法が成立したのが1998年ですから、鵜尾さんがタンザニアに行かれた頃というのは、日本ではNPO法人格というものさえ存在していなかったわけですよね。その頃と比べると、状況は変わっていますか?
 
鵜尾:当時はNGOなんてよくわからん、というようなところもあったし、企業との連携なんて今のような感じではとても考えられなかった。そう考えると隔世の感がありますよね。この10年間くらいを見てきて、やっぱりNPOやソーシャルビジネスが、形だけじゃなくて、しっかり実質、中身を伴って出来てきていると思うんですよ。そしていよいよ、お金と向き合わなくてはいけなくなってきたんだなという感じがしています。
 
 
 社会のお金の流れを変えるには順番があると思っていて、まずNPO側がしっかりしないと、ソーシャルに流れるお金の総量だけ増やしても、かえっておぼれてしまいます。日本ファンドレイジング協会を立ち上げたのは7年前なんですが、最初の5年間は必死にファンドレイザー育成のモデル化をしていました。全国津々浦々にファンドレイジングに理解のある人が増えて来て、ある程度かたちになってきたので、いよいよお金の流れそのものを動かすタイミングだなと。いま、休眠預金とか、社会的投資市場の形成とか、社会のお金の流れの総量を増やす取り組みを一気に推し進めています。今年の12月には寄付月間のキャンペーンもやるので、いろんな仕掛けをしているところです。
 
――1995年の阪神・淡路大震災でNPOという存在が一躍脚光を浴びて日本でもNPO法ができて、そこからまた時が経ち、2011年の東日本大震災で寄付額が一気に増え、被災地支援に携わるNPOにも多額の資金が流れました。あのとき、支援活動に尽力するNPO団体が評価と存在感を高めた一方で、一部の団体では不適切会計が大きな問題になり、「NPOってやっぱりすごいね」「NPOにはやっぱり任せられないね」と、相反する2つの評価が生まれてしまったようにも感じられました。
 
鵜尾:やはりクオリティーが問われますよね。NPO法人という法人格を持っている団体は大量に存在していますが、その中で信頼に足る団体がどれなのか、外から見てもなかなかわからない。ですが、一定基準をクリアしたNPO団体を認証する仕組みって、海外にはたくさんあるんです。法律遵守は当然のこととして、NPOがきちんと運営されているかを審査・認証するんですね。
 
 日本でも社会的認証開発推進機構が京都で第三者による社会的認証システムを運営していますが、その全国版を立ち上げようという話がいま進んでいます。手間もお金もかかるチャレンジですが、やってみようかという流れになっています。
 
 日本でソーシャルなお金の流れが十分ではないという背景には、プレイヤーとなるNPOがまだまだしっかりしていなかったという面があったと思うんですが、プレイヤー側はいまや玉石混交です。玉と石が相変わらず混在してはいますが、玉も出てきている。
 
 しっかりとしたいい活動をやっている団体が出てきているので、「ちゃんとしている」ことを可視化して区別することが、次のステップだと考えています。同時に、株式会社PubliCoの山元くんのように、NPOの組織マネジメント力を上げるサポートに取り組む存在も今後増えてくることが必要ですよね。
 
 
 行政の制度に関しては、寄付税制も整ってきているので、あとは社会システムとしてNPOやソーシャルビジネスにお金が流れる市場メカニズムをつくることが必要だと思うんです。それが社会的認証の仕組みだったり、呼び水効果を狙っての休眠預金の活用だったりすると考えています。
 
(第二回「社会的投資の日本型モデルづくりを目指して」へ続く)

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