産後ケアの普及による社会問題の予防と解決を目指して

NPO法人マドレボニータ代表 吉岡マコ

class
写真提供:マドレボニータ

アルバイトをしながら育てた教室
 
 契約社員とは言え、9時から17時半までのフルタイム勤務。定時になると、残業するほかの社員の視線から逃れるように子どもの迎えに走る。結局、半年ほどで出版社を退職した。
 
「時短ですらないのに、定時にほかの人に『すみません』って後ろめたい気持ちを抱えながら帰って、それでも子どものお迎えはぎりぎりで、いつもうちの子が最後のひとり、という状態。こんな生活、なんのためにしているんだろう、と思い始めて」
 
 働きながらも正社員としての就職口を探したが、どうしても見つからない。しかし、そのことがかえって教室再開に向けて吉岡さんの背中を押した。
 
「正社員としての仕事が見つからないなら、正社員にこだわるのはやめよう、と。そして教室を再開する場合のシミュレーションをしてみたんです。たとえば、月謝を1万円として、10人集まれば10万円。当時場所代が2万円くらいだったので、残るのが8万円。契約社員としてもらっていたお給料が月16万円くらいだったので、あと8万円稼げば、同じくらいの収入になるな、と」
 
 時給800円として、9時から15時まで、月曜から金曜まで毎日シフトを入れれば、9万6,000円の収入になる。社会保険が適用されないという条件も同じながら、教室とバイトを掛け持ちするほうが、自由になる時間は圧倒的に多かった。
 
「15時上がりができれば、子どもとの時間もたくさん持てるし、自分の勉強の時間も持てる。勉強のために時間を使えるということは自分の未来に投資ができるということだから、アルバイトをしながら教室を育てていって、教室が軌道に乗ってきたらアルバイトの時間を少しずつ減らして教室のウエイトを上げていこうと考えました」
 
 そう決めた吉岡さんは、出版社を退職した翌日から、スポーツクラブでスタッフとして働き始めた。土日に教室を開く傍ら、平日9時から15時まで働いた後は、保育園のお迎えの前にジムでトレーニングをしたり、研修としてスタジオのレッスンに参加したり。
 
「お休み中にご連絡いただいていた方々に再開のご連絡をして、7月の教室は満席でスタートしました。そこからは一回も休んでいないんですよ」
 
 教室を再開したのは1999年の7月のこと。そこから16年間休みなしというのだから驚かされる。それはまた、提供する側の体制さえ整っていれば、マドレボニータのプログラムを求める人はいるという証でもある。

関連記事