アフタースクールを日本の子育てインフラに!

放課後NPOアフタースクール 代表理事 平岩国泰

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まずは自分たちができることを
 
 いま、限られた予算の中でもなんとか学童保育が機能しているのは、「子どもたちのために」と、苦労しながらも支え続けてきた人々のおかげだ。
 
「『子どもたちのためになることをしたい』という思いをもっている人は世の中にたくさんいるので、そうしたボランタリーな力をもっと集めることはできるはずなんです。だけど、人件費はやっぱりきちんと払われるべきだと思います。民間の場合は比較的きちんとお給料が払われていて、それが利用料に跳ね返って高くなってしまうんですが、逆に公立はなかなか人件費が確保できないので、人の入れ替わりが激しいんです」
 
 楽しくやりがいを感じられる反面、元気な子どもたちの安全に配慮しながらの仕事は非常にハードなものであり、しかも生活が厳しいほど低賃金となると、「もうもたない」と辞めていく人材が多いのも当然と言えば当然だ。学童保育に携わる人材の半分は3年ほどで離職するというデーターもある。
 
「そういう現実が、活動しているうちにわかってきました。ほんとうに、学童を頑張ってきた方の善意で支えられているような。だけど、それではやっぱり人材が定着しないし、結果、施設としてのノウハウも残らなくなってしまいます」
 
 学童のニーズは急速に高まっているが、予算は追いつけていない。高まるニーズに現場の負担は増える中、現場の人々の善意と努力に頼るばかりではあまりにも危うい。
 
「とは言え、国になんとかしてくださいと言ってばかりいてもしかたがないので、僕らは僕らなりに人材や資金を集める方法を考えるし、同時にコストダウンしつつ質のいいプログラムをつくる方法も考えなければならない。もちろん、行政への要望ももっと出していきたいと思いますが、それ以上に、まずは自分たちができることをやろうと思っています。僕に限らず、そういう考えの人が集まっているのがNPOという業界ですよね」
 
 そうした状況のソリューションとなる可能性を秘めた取り組みのひとつが、2008年に始まった「企業プログラム」だ。
 
「企業さんが市民先生になってくださるプログラムです。企業さん側が平日にアフタースクールに来てくださることもあるし、週末に企業さんに子どもたちがお邪魔する場合もありますが、職業体験のようなかたちで、専門的な技術をもった企業さんが理科実験をしてくださったり、金融の企業さんがお金のことを教えてくださったり。食品系の企業さんと食育プログラムもあります」
 
 その企業ならではのリソースを用いたプログラムはCSRの一環として行われ、費用も企業側が負担するケースが多い。この企業プログラムに平岩さんは大きな可能性を感じている。
 
「いま、とくに高学年の子どもたちの放課後が課題になりつつあるんです。高学年には塾や習い事に忙しい子どもが多く、学童に通う子どもたちの大半は低学年ですが、10歳から12歳というのは非常に多感で、すごく成長する時期です。その時期に、もっと子どもたちが夢中になれたり、おもしろいと思えることに出会えたらいいなと思っていて。そういう意味で、企業プログラムにはすごく期待しています」
 
 たとえば、小学校も高学年になると、女の子を中心に、ファッションへの関心は高い。
 
「いま、ファッション関係の企業さんと集まって『ティーンズファッションプロジェクト』というプログラムを運営しているんですが、たとえばデザイナーの方を講師に迎えたプログラムをすると、子どもたちの目がとてもキラキラと輝いているのがわかるんです。そうした時期ならではの、興味や関心を広げたり、深めたりといったコンテンツを、もっとつくっていきたいなと思っています」

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