「よさそうなこと」ではなく「本当に変わること」を

NPOマネジメントラボ 代表 山元圭太

NPO経営戦略
画像提供:NPOマネジメントラボ

「社会を本当に変える力」を磨く10のステップ
 
 ファンドレイジングのお手伝いをするときに、山元さんが心掛けているのは、財源のバランスだ。NPOの財源は、寄付、会費、助成金、委託金、事業収入と多岐にわたる。
 
「NPOの持続可能性ということを考えるときに重要なのは、どの財源を持つか、ではなく、どの財源もバランスよく持つこと。寄付や会費とのシナジー効果も含めて財源の設計をして、事業はこう伸ばしていこう、寄付はこう拡大していこう、という考え方をしています」
 
 NPOマネジメントラボがコンサルティングをする上でこだわっているのは、そのNPOの事業や規模を大きくすることではなく、ほんとうに社会を変えられる組織にすること。そのために最適なファンドレイジングを設計する。
 
「ほんとうに変えるっていう力を磨いていただきたいし、ほんとうに変わるっていうところを見たいというのが、僕らNPOマネジメントラボのやりたいことなんです。本気で社会を変えたいと思っているチェンジメーカーの想いをかたちにしていくお手伝いをするということが、僕らのミッションだと捉えているので、そのために必要な役割を担っていきたい」
 
 山元さんが徹底して追求するのは、「リアルチェンジ」。「よさそうなこと」ではなく、「本当に変わること」をしていくこと。
 
「フィリピンのごみ山で出会った7歳の男の子が僕の原体験なんですが、『あの子を救えそうなこと』ではなくて、『あの子を救えること』がしたい。じゃあ具体的になにをしたらいいのか、それは誰ができるか、その人にそれをしてもらうにはなにが必要なのか、それを踏まえて自分たちはどう動くべきなのか、ということを常に考えています」
 
 そうした思いを根底に、自らも現場を経験し、いろいろな団体や人の話を聞き、NPO支援に携わる中で見えて来たのが、山元さんが掲げる「NPO経営戦略の10のステップ」だ。
 
「これはいまの僕に見えているステップなので、また今後変わっていくかもしれませんが、いまは大事だと思っています。そもそもどういう社会、どういう世界を実現したいのかというミッションがあって(存在理由)、なぜいまそうなっていないのか(問題構造)、じゃあどうすればそれが実現できるのかという仮説を立て(問題解決仮説)、その中で自分はどういう役割を担うのか(役割定義)、逆にほかの部分はどういう人たちと手を組むのか。自分の役割の中でどんな成果をどれだけ出すのか(成果目標)、それをするために何が必要で(必要資源:資金・人材・ネットワーク)、それをどう賄うのか(資源調達)。さらにそれをどういう体制で進め、(組織基盤)、アクションし、(実践実行)、最後にそれを盲信しないように定期的に振り返って更新する(カイゼン)仕組みをつくる。これが一気通貫しているかどうかがすごく重要だと思っています」
 
 この10のステップを一緒に考えていく上で重要なのが、トップダウンとボトムアップのバランスだ。どちらかに偏った瞬間、クライアントとの信頼関係が揺らぐ体験もした。
 
「あるべき論だけを上から言い続けても、現場サイドは『そんなことはわかっている。具体的にどうしたらいいんだ』ということになりますし、現場サイドから言い続けるだけでも、上の人たちに鬱陶しがられたりする。ただし、現場でがんばって業務改善をしても、それがその団体のそもそものミッションに合致したものかどうかという疑問もつきまとう。だから、バランス感覚を大事にしながらも、やっぱりできれば上から整理していきたい」
 
 こういう場面では、経営コンサルタントとしての経験と、現場での実務経験の両方をもつ山元さんの強みがいかんなく発揮される。自らの経験をもとにしたプランニングは、クライアントの納得度も信頼度も高い。

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