「よさそうなこと」ではなく「本当に変わること」を

NPOマネジメントラボ 代表 山元圭太

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自分がいなくても機能する組織を
 
 大学生で初めてボランティアに参加して以来、「社会を変える」成果を生み出すことを追求する姿勢は一貫している。山元さんの言葉の一つひとつに説得力があるのは、現場経験、コンサルティング経験、それぞれの土台がしっかりしているからなのだろう。
 
「大学のときから12年くらいずっと一気通貫しているっぽく見えるストーリーですからね(笑)」
 
 新卒で入社したコンサルティングファームで、人事部を選んだのにも、いまにつながる思いがある。山元さんが就職活動中に意識していたキーワードとして、「人」と「組織」があった。その2つについて、現場で通用する泥臭さ、生きた強さを身につけたかったのだと、山元さんは言う。
 
「学生当時NPOを見ていて必要だと思ったのは、課題解決のためのプロはいるんですから、その人たちが自分たちの力で自分たちの現状を打破することができる環境をつくることでした。僕はどこか特定の団体にいることは当時からイメージしていなかったので、その団体の問題は自分たちの力で解決できる力を身につけていただけないと、支援者がいなくなったら終わりっていうことになってしまったら意味がない。だから、いかに個人のモチベーションやポテンシャルを引き出して、組織としてちゃんと機能できるようにするかという力を身につける上で、人事部での経験は武器になるかなと思ったんです」
 
 これだけ一貫していると、大学生の頃から描いていた夢、確固たる目標を持って、そのときどきで自分に必要な経験を積み、自分の目標に近づくためにタイミングを見計らいながら転身し、キャリアを積み上げてきたのかと思えるが、意外にもそうではないのだと言う。
 
「よくそう言っていただけるんですけど、自分の感覚的にはちょっと違います。目標を明確に持ってそれを軸にブレイクダウンして一歩ずつ階段を上って行くっていう考え方を『キャリアアンカー理論』というんですが、もうひとつ、『計画的偶発性理論』というものがあります。キャリアは偶然の積み重ねであるという考え方です。キャリアは前には広がっていない。自分が歩んできた後に積み重なっているのがキャリアであると」
 
 自分は後者であると、山元さんは言う。ただし、自分にとってプラスとなる「偶然」は、計画的に起こすことができるそうだ。
 
「そのために常にもっておくべき心構え、心の姿勢というものがあります。好奇心とか、オープンマインドとか、冒険心とかいったものなんですが、そうしたものを持ちながら自分の関心のあるところに向かって歩みを進めて行けば、気づいたらあなたにとっていいキャリアが集められる。それが計画的偶発性理論です。僕もそんな感じで、自分がワクワクすることをしたいと思っていろいろやっているうちに、いまの場所にたどり着いた。ポイントとしては、ことあるごとにいろんな人に自分がしたいことを言いまくっていたことがあるかもしれません」
 
 常日頃からやりたいことを口にしていると、役に立つ情報や人脈を紹介してもらったり、具体的な機会を与えられたりと、周りのサポートも得られるようになっていく。これは、ソーシャルセクターに限らず通用するキャリア形成のヒントなのかもしれない。最後に、これからの取り組みにかける山元さんの思いを伺った。
 
「ミッションが達成できる、問題解決がほんとうにできる組織をつくるお手伝いをしたい。実現能力を磨くっていうことがいちばん大事で、そこを徹底した上で、そのために必要な仲間を集めるために、ファンドレイジングやマーケティングを正しく使えるようにしていく。そういう団体を増やしていきたい。ほんとうに社会を変えていく力のある組織が、それにふさわしい仲間や費用など、最適な資源をきちんと手に入れて活動していける状況をつくっていきたいと思っています。まだ始めたばかりですが、いろんなことを吸収しながら取り組んでいけたらと思います」
 
【写真:永井浩】
 
山元 圭太(やまもと けいた)*NPOマネジメントラボ代表。日本ファンドレイジング協会認定ファンドレイザー。元NPO法人かものはしプロジェクト日本事業統括ディレクター。 1982年滋賀県生まれ 同志社大学商学部卒。卒業後、経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして、5年間勤務の後、2009年4月にかものはしプロジェクトに入職。日本部門の事業全般(ファンドレイジング・広報・経営管理)の統括を担当。「社会起業塾イニシアティブ(NEC社会起業塾) コーディネーター(2011〜2013年)」「内閣府復興支援型地域社会雇用創造事業 みちのく起業 コーディネーター(2012年)」として、日本各地のソーシャルベンチャーやNPOの支援も行なう。
 現在は、NPOマネジメントラボ代表として、「本当に社会を変えようとするチェンジメーカーの『想い』を『カタチ』にするお手伝い」をするために、キャパシティ・ビルディング支援や講演/セミナー、コーディネートを行っている。専門分野は、ファンドレイジング、ボランティアマネジメント、組織基盤強化、NPO経営戦略立案など。

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