非常時に機能できる平常時のしくみを
納得いかなくても一旦受け入れる
地域に密着してほんとうにその地域に合ったまちづくりをする。そのために、多田さんは大きなネットワークとなった「まごころネット」をコンパクトにして、かつ全国にいるボランティアさんがそれぞれの地域に根ざして独立的な活動に発展させてもらいたいと考えている。
「大阪は大阪、東京は東京で、独立してその地域に軸足を置いて活動する。それでいて、つながりも保っているという体制が理想です。遠野一か所でつながるっていうのはやっぱり限界がありますから。そうして日本のどこかで何か起これば、近いところを拠点にして、みんなが援護していけばいい。まごころネットは応援してくれた人のいるところが全て地元なんです」
その地域のことを思えばこそ、住民とけんかになる場合もある。被災地の住民と支援でやって来た人が、互いに遠慮し合い腹を割って話し合えないことも少なくない。
「やっぱり遠慮しないでぶつかっていかないといけないんですよね。むしろけんかできるくらいの信頼関係をつくりながらやっていかないと。それぐらいでないと、復興もそうだし、地域の活性化も難しいでしょう」
とはいえ、現地で活動していると納得のいかないこと、不条理なものとぶつかることもある。
「一旦ぜんぶ受け入れて、許容するしかないですよね。“許容する”なんて言うと高飛車に聞こえるかもしれないけど、お互いが納得して前に向かって進んでいくためには、“受け入れる”って思わないと。まずは、そこから考える。そしてやはりダメだと思う部分はダメだと正直に言って、どうすれば良いかを一緒に考えていくんです」
結局、それが問題への最短のアプローチとなるのだという。飲み込んでばかりいては、腹の底にたまっていくものがありそうだが、多田さんは飄々としている。
「仕事でもなんでも、いいときもあれば悪いときもありますよね。そのギャップがあるから、うまくいかないときに疲れるわけです。だから最初から、絶対問題があるし、大変なことが起きるって思っておくんです。そしたら別にたいしたこともないし、こんなもんか、と思える(笑)。そして必ず解決できると言う自信も持っておくんです。実力はなくても」
現実に存在するものに、「嫌だ」とかぶりを振るだけでは何も始まらない。だから一旦は受け入れる。そして問題解決へ最短のアプローチを考える。復興支援に限らず、さまざまな場面に通じる考え方だろう。