自然エネルギーを復興の原動力に

福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会 半谷栄寿

キッザニアの森
「キッザニアの森」【写真提供:福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会】

ビジネスマンと社会活動家の二足のわらじ
 
 半谷さんは大学卒業後、東京でビジネスマンとして働く傍ら、社会事業に取り組んできた。1991年に環境NPO「オフィス町内会」を設立。1,000ほどの事業所の古紙を、共同で回収するしくみをつくりあげた。
 
「オフィス街で、企業同士の横の連携がほとんどないのに、共同して古紙の回収をするしくみは画期的だったと言われています。加えて、各会員企業の社員の皆さんに古紙の分別を習慣付ける先駆けの役割を果たしたことも、非常に大きな経験になっています」
 
 オフィス町内会はこの活動によって、1993年にリサイクル推進功労者等表彰で内閣総理大臣賞を受賞した。さらに2006年には、森林の間伐を促進する活動、「森の町内会」を立ち上げる。
 
「植樹、育樹も大切ですが、いまの日本の人口林は間伐が必要なんです。かつては日本で使われる木材の90%以上が国内産で、林業も元気でした。それが、いまは自給率25%。森林の手入れをしても木材が売れないので放置するようになり、森林が荒れてしまった。そういう意味で、日本の森林の問題は、まさに経済と環境のはざまにあるんです」
 
 この森の町内会の活動の一環として、2010年から職業体験型テーマパークのキッザニアに「キッザニアの森」というパビリオンを出展している。ほんものの木の枝をのこぎりで枝打ちする、人気のアクティビティのひとつだ。
 
「子どもたちの成長のための体験の仕組みは、キッザニアの理念と非常に近いものなんです。そこで、パビリオンの出展でご縁をいただいていたキッザニアの住谷社長の協力を仰いで、キッザニアのノウハウをおおいに活用させてもらいました」
 
 キッザニアとの連携により、南相馬での自然エネルギーの体験学習事業の構想を立ち上げたのは2011年8月。これまでの活動を振り返れば、広く環境というキーワードで結ばれているのかと、はた目には思える。そこには、南相馬市出身ということに加えて、東京電力の執行役員であったという半谷さん自身の経歴が、大きな影響をもたらしていた。
 
第2回「何としてでも、復興を成し遂げる」に続く)
 
 
 
半谷 栄寿(はんがい えいじゅ)*1953年福島県小高町(現・南相馬市)生まれ。1978年に東京電力に入社。同社にて数々の新規事業を手掛ける傍ら、1991年に環境NPOオフィス町内会を設立し、古紙リサイクルや森林再生に取り組む。2010年に同社執行役員を退任。2011年9月に福島復興ソーラー株式会社を設立。さらに2012年4月には一般社団法人福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会を立ち上げ、現在に至る。
 
【取材・構成:熊谷哲】
【写真:shu tokonami】
 

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