自然エネルギーを復興の原動力に
太陽光パネルの向きを変えて発電量の変化を学ぶ子どもたち
人のために役に立ちたい
体験学習といっても、単なる「気づき」を提供することだけが半谷さんのめざすところではない。
「南相馬ソーラー・アグリパークは、太陽光発電の福島県における先駆けでもあると同時に、植物工場という新しい農業による原発の風評被害払拭のモデル事業でもあります。さらに、それらを生かして子どもたちの成長を支援し、復興を担う地元人材を育成するのが、この事業の最終的な目的なんです」
先駆け・モデル事業としての価値のひとつが、夏休みや冬休みに開くスクールにあらわれている。昨年は、南相馬市との共催で30回のサマースクールを開き、参加者は1か月間で700人超。地元の方はもちろん、全国からもたくさんの人々が来訪したという。
「いろんな問題を抱えながらも南相馬は元気に前進しているということを、全国の方々に交流する中で知っていただきたい。そして、お互いの顔の見える人と人との信頼関係で、農作物などの風評被害を払拭していきたいんです」
小中学生向けの体験学習プログラムは「グリーン・アカデミー」と名づけられた。大切にしているのは、子どもたちの「自ら考えて行動する力」をいかに育むか、ということだ。
「南相馬の子どもたちは本当に大変な経験をしましたが、いただいた支援への感謝の気持ちと同時に、支援してくれた人のようになりたいという気持ちが芽生えているのを強く感じます。『人のために役立ちたい』という思いは、彼らの成長にとってすごいモチベーションになるはずです」
パークでの体験学習が、子どもたちの思いと、考える力・行動する力を育む橋渡しとなることを、半谷さんは期待している。
「答えを教える学習ではなくて、体験学習で自ら考え、仮説を立てて実行してみる。考えて行動する力を身につければ、子どもたちの人生はより力強く、前向きなものになるはずですし、その中から福島の復興を支える人材が出てくるに違いないと信じています」
半谷さんは、子どもたちの経験が実になるように、未来への希望を体験学習プログラムに一つひとつ落とし込み、練り込んでいる。