景気悪化を避けるために、家計の消費を支えよ

PHP総研コンサルティングフェロー・嘉悦大学教授 跡田直澄

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2020年の東京オリンピックに経済効果はない
 
 インフラ整備に2兆円の予算が割かれているが、いまの日本では公共投資の乗数効果はほとんどない。投資金額に0.9をかけた程度と考えるのが妥当であろう。企業によっては、受注で得た売上金を借金の返済に回さざるをえず、昇給までの余裕はない。かつて公共事業をいくらやっても効果がでなかったのは、そのせいであった。
 
 公共投資に乗数効果は期待できないということは、80年代以降のマクロ経済学では共通した認識になっているが、一方で、投資した分だけGDPを上昇させる効果は認められる。たとえば1兆円を公共事業に投資すれば、GDPが9000億円程度プラスになるという最低限の効果は見込める。逆にいえばその程度の効果しかなく、公共事業を積極的にやる意味はない。
 
 公共事業に景気対策としての効果があったのは1960年代以前、経済成長が始まったばかりで民間経済がまだそれほど拡大していなかった頃の話である。1964年の東京オリンピックに向けた高速道路や新幹線といったインフラ整備は、すべての国民に期待を持たせ、実際にその後の日本経済の発展にも大きく貢献したといえる。
 
 しかし、いま第二東名高速道路や第二名神高速道路をつくることに、災害時のリスクヘッジ以外に果たして意味があるだろうか。公共事業に効果が期待できるのは発展途上の段階であり、現在の日本のように、経済が拡大して成熟している段階では、一時的なGDPを増やす以外、投資額以上の効果は見込めない。2020年の東京オリンピックも同様である。老朽化したインフラの整備はしかたがないが、成熟した都市に費用をかけて新たな施設をつくっても、オリンピック特需として一時的に建設業などが潤う程度で、オリンピック後にも残る効果はほとんどないであろう。
 
 北海道や沖縄で開催するのであれば少しは効果が見込めるかもしれないが、その場合でも残されたインフラの扱いに困ることになるのは目に見えている。現在の日本で、しかも東京でオリンピックを行うことは、財政再建には貢献しないばかりか、むしろ財政悪化のリスクをもたらす。過剰な投資のしわ寄せに後々苦しむことがないよう、過去の反省を生かさなければならない。

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