景気悪化を避けるために、家計の消費を支えよ

PHP総研コンサルティングフェロー・嘉悦大学教授 跡田直澄

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現金給付に1兆円規模の予算を
 
 消費税増税が景気に及ぼす問題は、物価上昇に賃金上昇が追いつかないと、心理的な負担感から買い控えが起こり、消費が落ち込んでしまうというところにある。このマイナスの影響をいかに緩めるかが景気対策の重要なポイントとなるが、もっとも確実な効果が期待できるのは現金給付である。消費税の上昇分だけ消費支出を増やさなければ景気は悪化する。そこで所得が一定基準に満たない世帯に1万円から1万5千円を給付する。
 
 たとえば、消費税が3%上がると105円だったものが108円になるので、値上がり分の3円を、給付された1万円の中から出してもらうのである。こうすれば家計の負担は増えず、消費税増税の負担感からくる買い控えを避けられる。給付金が貯蓄に回る可能性は高くないので、確実な効果が期待でき、また、低所得者ほど高負担になるという消費税の逆進性に対する策としても評価を得られるはずである。
 
 さらにいえば、年収が300万円~500万円程度で子育てをしている世帯など、家計も厳しく消費性向も高い世帯に確実に給付金が回るシステムをつくれば、経済にもたらす効果はより高くなる。民主党政権時代に行われた「子ども手当」では、およそ3兆円の現金が給付され、そのうち6割が消費されたという。子ども手当は15歳までの子どもがいる家庭に所得制限なしに配られたため、高所得世帯では消費されずに貯蓄に回ってしまったが、それでも経済に1兆8000億円の効果をもたらしたのである。
 
 現時点でこの現金給付につけられた予算は3000億円。これでは規模が小さすぎるので、さらに額を増やす必要がある。具体的にいえば、一世帯あたり1万円とされる給付額を、一人1万円にするか、あるいは一世帯あたり3万から4万円というように、予定の3倍程度に増やして予算を1兆円規模にすれば、GDPにも多少の効果は出てくるはずである。子ども手当で現金給付の経済効果は実証されているのだから、そのくらい大胆な対策を行う価値はあるだろう。

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