道州制基本法案を臨時国会で徹底審議せよ

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 荒田英知

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 問われていることは、基礎自治体が高い行政能力を確保するための術は合併以外にはないのか、という点である。平成の大合併後に制度化された定住自立圏などの市町村間の水平連携や、現在、府県が町村に対して果たしている補完・支援機能を道州に残す垂直連携など、地域特性に応じて一律ではない多様な選択肢が講じられるべきである。また、そうした具体策を町村側からも問題提起していくべきだ。
 
 戦前には9割を超えていた町村居住人口は、いまや全人口の9%となった。しかし、面積では国土全体の約半分を占めており、国土保全や水源涵養などの役割を担っている。町村側の一律再編に対する懸念を払拭するためには、「基礎自治体の多様性の原則」などを基本法に明記していくことが求められる。
 
関西広域連合からの問題提起
 
 道州制基本法案を巡っては、もう一つ注目すべき報告書がある。関西広域連合が7月にまとめた「道州制のあり方について」の中間報告である。そもそも関西広域連合は、設立過程で「道州制への一里塚」か「道州制とは別もの」かの論争があり、設立時には「道州とは異なる組織であり、広域連合がそのまま道州に転化するものではない」ことを確認していた。
 
 道州制とは一定の距離をおいてきた関西広域連合が、道州制基本法案の動きにいち早く反応して中間報告をまとめたことは興味深い。報告書は、冒頭で「国主導で中央集権型道州制の導入が進まぬよう、今後、政府が進めるであろう道州制検討に係る課題・問題点をあぶり出す」としており、これは地方側すべてで共有できる問題意識であろう。
 
 中間報告は「府県に代えて道州を設置する目的は何か。現行の府県制の限界は何かを明確にする必要がある」とした上で、「巨大な集権型の道州はあり得ないとするなら、どういう分権、分散型の道州があるのか」と問題提起し、「小規模市町村の補完や大都市の位置づけに単純な回答はなく、複数のオプションを想定すべきである」と提言するなど、道州制の重要論点に踏み込んでいる。
 
 これらの問題意識は、本稿ですでに示した2つの論点とも重なるものであり、あるべき道州制を考える際の重要な論点である。道州制基本法の国会審議が始まってからも、国会任せにすることなく、地方側からしっかりした問題提起を積み重ねる必要がある。
 
 いまや道州制は構想レベルから現実の政策課題になった。これから求められることは、「良い道州制」と「悪い道州制」を見極め、国民にとって望ましい、あるべき道州制を方向づけていくことである。
 
以上

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