道州制基本法案を臨時国会で徹底審議せよ

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 荒田英知

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 1つ目の論点における焦点は、全国知事会などが表明した、「法案には府県の廃止が明記されている一方で、国の省庁再編や解体、出先機関の原則廃止などに触れていない」というものである。
 
 道州制は、国の内政に関する仕事を大幅に地方に委ねる改革であるという点は、地方側の共通認識である。しかし、自民党がまとめた基本法の骨子案には「都道府県を廃止」し、「国から道州へ大幅に事務を移譲させて、広域事務を処理するとともに、一部都道府県から承継した事務を処理する」との文言がある。これには、かつて地方制度調査会が答申した、国の出先機関を統合して地域ブロック機関とする「地方庁」を想起させる、国主導型道州制のニュアンスが読みとれる。
 
 一方で、骨子案の基本理念には、国と道州の位置づけについて、国の事務を国家の存立の根幹に関わるもの、国家的危機管理、国民経済の基盤整備などに極力限定し「国家機能の集約、強化を図ること」としたうえで、道州は「国際競争力を持つ地域経営の主体として構築すること」としている。「地域経営の主体」たる道州が国の総合出先機関というのは違和感があると言わざるを得ない。
 
 第一次安倍政権が設置した道州制ビジョン懇談会は、2008年にまとめた「中間報告」で、わが国が目指すべき道州制の姿を「地域主権型道州制」として描いた。地域の自立性を高めることを目的とするその考え方は、地方側や経済界からも支持されている。また、公明党も一貫して地域主権型道州制を提唱しており、みんなの党や日本維新の会も同様の立場である。
 
 しかし、自民党内には地域主権という言葉は国家主権と相容れないとする考えがある。言葉の適否については吟味が必要かも知れないが、道州制の中身まで国主導にしてしまったのでは本末転倒であろう。自民党には、道州制をめぐる党内の温度差をいかに克服するかも問われている。
 
 道州制にはまだ定まった見解がないと評される場合がある。たしかに、過去の道州制に関する提案をみれば、単なる都道府県合併に留まるものから、連邦制を採用するものまで、多彩な考え方があった。しかし、わが国が目指すべき道州制の理念や制度設計の基本方向は、道州制ビジョン懇談会の中間報告で整理されたと言ってよい。その考え方を是とするなら、道州が国の出先機関ではなく広域自治体であることを明示することが重要である。国の省庁と出先機関の改廃を明記した上で、「道州の自治の原則」などを法案に加えていくことが必要なのではないか。

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