ピンチをチャンスに変えるためには
熊谷哲(PHP総研主席研究員)
身を切る改革がよいことばかりではない
熊谷 マニフェスト大賞で衝撃的だった出会いは、福島町議会の皆さんでした。授賞式のためだけの旅費は出せないと、法被を着て、お土産を配って、アンケートを取って。視察や、出張のあり方を考えされられました。
北川 あれこそがまさに善政競争ですよ。ただ、政務活動費がゼロ円という議会が約600あるんですね。月1万円のところも同じくらいある。ムダなところやおかしなものは削ったらいいけれど、ゼロの政務活動費で本当に民主政治が行えるかという問題は、真剣に考えなければいけません。
上村 自らの知恵と、様々な方々との対話によって生み出された地域の課題解決の手法や政策を打ち出すことで、住民に認めてもらえる議会になろうというのが元々の地議連のあり方でしたから、そこは共有されていると思います。そのために必要なコストをしっかり見定める必要がありますね。もちろん、無尽蔵に増やすなんてことは考えていませんが。
北川 議員定数を減らす、議員歳費を減らす、政務活動費を減らす、という3つのテーマは、自分たちが議員として間に合わないということを証明しているだけですね(笑)。今のような時こそ、「ムダを削りました」という量的削減と、それ以上に「ここに資源を投入して頑張ります」という投資の部分を合わせ持って、議会の質的充実を進めなければいけません。「議会が悪うございました、政務活動費をゼロにします」という類は、改革の名に値しませんよ。
上村 地元の事情はそれぞれなので、力技で定数を減らすとか、歳費を減らすという流れもないわけではないと思います。ただ、その中でもきっちりと筋を通しながら、抵抗してもらっているというのが地議連のメンバーだと思いますね。
熊谷 小さい規模の自治体ほど、生活面でも議会活動するのでも、個人としてある程度の余力というか余裕がないと議員の仕事はできないですよね。他の国々と比較しても、その傾向は顕著だと思います。二元代表制における地方議会の存在を考えると、なり手がいなくて「頼むからやってくれ」とリクルートしてようやく定数が揃うような、個人に負担が重くのし掛かるような議会のあり方は、やはり問題があると思います。
北川 一つには、議会は自分たちの都合のいいように動いてくれたらいい、議会は憎き敵役だと思っている首長ではなく、住民の代表である議会の信託に応えられる執行部をつくろうという人に首長になってもらわないといけない。緊張感のない二元代表を続けていたら永遠に中央集権の構造は変わらない、という構造を理解して、あるべき姿を理論構築することが重要ですね。
上村 そうすると、財政全体を見られるとか、方向性を明確にできるとか、議会のミッションも変わってきますね。小さな自治体でも、自分も議員に出ようという意欲を持つ人が出てきやすくなるかもしれない。
北川 行政の小間使いのような仕事をさせられて、選挙でお金使わされて、選挙で頭下げてという、そういう文化を本当に変えなくてはいけませんね。「私たちが代表」という住民自治の意識や、民主政治を形づくるためのインフラのような考え方に着目して、学校教育などの機会を捉えてしっかり教えていかないといけないですよ、本当に。