ピンチをチャンスに変えるためには

北川正恭(元三重県知事)×上村崇(京都府議会議員)×熊谷哲(PHP総研主席研究員)

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マニフェストスイッチで新しい選挙のかたちを
 
熊谷 マニフェスト大賞の実行委員長もされていた福田さんが川崎市長になられて、横浜市や世田谷区と保育で協定を結んで、市境の周辺で融通を効かせながら保育サービスの質と量を確保していくことが実現しました。あれは単に個人のパフォーマンスじゃなくて、まさに善政競争をしてきたところが根っこにあると思うのですが。
 
上村 議員だからこそ市の枠を軽々と越えていた感覚が、首長になっても柔軟性を持って取り組めているように見えるのは、住民にとっても心強いですよね。私たちにとってもLM地議連の仲間から誕生した初めての政令市長ですから、活躍が伝えられるのはとてもうれしく、ありがたいですね。
 
熊谷 北川先生が冒頭に触れられた地域社会や政治環境の時代の移り変わりの中で、LM地議連のようなところで善政競争の波に洗われて刺激を受けて頑張っている人が、地域の中で主体的に活躍するというのは、とてもいい人材供給の仕組みに映ります。
 
北川 これは運動論なんですよ。今まではLM地議連というと全体から見れば少数派でした。けれども、その少数派が全体を動かし始めているんですね。この4月の統一地方選挙からはネット選挙が前面に出て来ますから、これからは、個人後援会の枠を超えた第三者に訴える力がないと議員も通りにくくなってくる。そうなったとき、マニフェストや議会改革というLM地議連の取り組みが、より光ってきますよ。
 
熊谷 「議会の権威だ」とか「議会の品位だ」というところで思考停止している人たちがまだまだたくさんいます。
 
北川 マニフェストというと民主党政権でキズがついたようになっているけれど、有権者のアンケートを取ると7割以上が必要だと認めているんですよ。政策の優先順位で競うという代議制の大原則が、しっかり認めてもらっている。それを情実の選挙に戻してしまったら、ダメですよね。
 
上村 LM地議連では、やはりマニフェスト型の選挙をしようということで決議もしました。さらに、「マニフェストスイッチ」という新しいプロジェクトを立ち上げました。マニフェストの検証や比較を可能にするため統一フォーマットを作って、全国の候補者から寄せられたマニフェストをネット上でオープンデータとして公開して、政策や人柄の比較が簡単にできるようにしています。
 
北川 自分たちのきちんとした政策を見せて、4年間の実績を証明して選挙を戦う、どちらが期待されるかという戦いになれば、マニフェスト型の選挙のほうが圧倒的に強いです。それが地方選挙で証明されていますから、マニフェストで国会を地方から変えましょう、地方は議会から変えましょう。そういう機運だよね。
 
上村 この統一選がひとつのきっかけというか、次のステージに上がるきっかけになれば、と。
 
北川 これは地方創生でもあるんですよ。これからは間違いなく高齢社会、だとすると負担の分配を問う選挙にならざるを得ないんです。地方で言えば、「負担金を減らしてくれ」とか、「給付を減らすよ」とか、そういうことにならざるを得ないんです。今までは、予算の分配をしていればいいから、全部お任せの白紙委任での通用したけれど。
 
上村 白紙委任(笑)。
 
北川 だけど、これからは主権者のほうが強くなるわけですね、負担する側ですから。したがって、負担する側の立ち位置での情報公開が必然なんです。だからこそ、約束としての政策を問われた時に敢然と答えられる候補者が強いし、政党が強くなるというのは、私は真理だと思いますね。
 
上村 そういうことを改めてとらえ直して、バカまじめに、愚直にやっていこうと思います。
 

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