ピンチをチャンスに変えるためには
上村崇氏(京都府議会議員)
ローカルマニフェスト推進地方議員連盟の挑戦
北川 90年代はじめに族議員の問題が深刻化したときは、選挙制度や政治資金規制法が見直されました。官僚の官官接待が表面化したときは、肥大化した情報非公開の官僚機構ではもうダメだと分権推進法ができたんですよ。私が知事になったときにはカラ出張に裏金と、官官接待をする側が問題になって、三重県が先陣を切って大鉈を振るいました。そうやって立ち位置が変わり、国会や役所の文化が様変わりしてきたのに、地方議会はその流れに乗り遅れてしまった。その意味で、本質的な大改革を迫られている地方議会をどうするか、というのが今回の統一選の焦点だと思いますね。
熊谷 その、立ち位置を変えるアクションというのは、どのあたりに具体的にフォーカスされるのでしょうか。
上村 一つは、私が共同代表を務めているローカルマニフェスト推進地方議員連盟(LM地議連)が約500人の仲間で形成されていて、「お願いから約束」というマニフェスト型の選挙をやろうということで活動を進めています。北川先生がよく言われている「善政競争」で、お互いに気づきや刺激をもらいながら、頑張っている議員や議会もすごく多いですよ。
北川 マニフェスト研究所が都道府県と市区町村の議会すべてにアンケート調査して1,440ぐらいから回答を得たのですが、議会改革度で上位のうち96%は議会基本条例を制定しているんですね。結果として、改革にアグレッシブなところは形式要件を整えている。それが気づきのスタートになって、そういうところから一つ一つ進めていってるんですね。
熊谷 LM地議連ができてもう10年になります。
北川 政策を競い合うアワード(賞)をつくって首長や議会・議員を表彰しようというところからスタートして、最初は200件ぐらいだった応募が、2014年は2,223件集まりました。約1,700の自治体数から見ると、すごいことでしょう。これぞ善政競争ですね。
上村 マニフェスト大賞というと、応募で懸命になるのが夏の風物詩ですね。締め切りに向かって一生懸命になって、あれで一体感が出るんですよ。議員の側も、叩かれてばかりで褒められ慣れていないので、「これを応募して良いのかな」というところがあったりするんですよね(笑)。そこで目標を立てて取り組んで、埋もれている良い事例を掘り起こして、全国にマニフェスト大賞という取り組みを伝播することができているなという実感があります。ようやく2013年にはすべての都道府県から応募がありました。この流れは大事にしていきたいですね。
熊谷 良い意味で注目が集まるのは励みになりますよね。審査委員長を務めていらっしゃる北川先生から見ても、質的にもかなり向上してきていると思われますか。
北川 質、量ともにすごく高まってきていると思います。それは、まさに善政競争をするから、その中で気づきを得る。例えば、議員として自分の後援会で市政報告会をしてきたけれども、はっと気がついたら、議会全体で市民と向き合ったことがない。議会の存在感というのは何だ、となったわけですね。
上村 議会全体で活動したことの報告会を開催しようとか、通年議会にすることで首長の先決処分や招集権のあり方を見直そうとか、議会基本条例の中身を検討する中で議会のあり方そのものを見つめ直す動きが随分と広がったと思います。
北川 議員の不要論というよりは、むしろ議会の不要論が6割超えているんですよ。そんな中で議員をやっていても張り合いがないでしょう。だから、議会全体の信頼を高めて、二元代表の一元を担う、そういう機運は大分盛り上がってきているんですね。そういう点で、マニフェスト運動やLM地議連の果たした役割は本当に大きいと思いますよ。
上村 ただ応募したり、真似をしたりするだけでは面白くないから、何か一つ他にはないチャレンジをしてみようというところがありますね。それが新しい価値を生み出してきていると思います。
北川 議会は議案を通す道具とみなして、議会の前にちゃんと根回しして押さえることができるのがいい首長であり、いい部長という考え方が議会をものすごくだめにしてきました。お互い丸めてって、生ぬるい追認執行部という議会。これを根本的に変えようという流れの中での古いものとの葛藤、今がまさに端境期なのだと思います。