ソーシャル・キャピタルが復興を確かなものに

藤沢烈(RCF復興支援チーム代表理事)×熊谷哲(PHP総研主席研究員)

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人に着目してコミュニティを再生する
 
熊谷 私は、インフラはもちろん重要だけれども、長期にわたる整備を被災者が待っていられるかが問題だと、スピード感を最優先したまちの再建や復興を構想すべきだと繰り返し言ってきたのですが。現状は、やはりインフラ待ちというところが否めません。
 
藤沢 企業誘致が進んでいくような時代でもない。地域の関係づくりの中で新しいビジネスが生んでいくことに力点を置くべきだと強く思います。
 
熊谷 先ほどの、ソーシャル・キャピタルの役割につながってくるところですか。
 
藤沢 外部と交流するからこそ地域の資源を再発見して、新たな価値を創造できる。例えば、気仙沼市と陸前高田市の4社が組んでの商品開発が行われていたりするんですね。大変好評で、スープにひとつ1000円以上の値付けをしている事例もある中、売れ行きもいいと聞いています。
 
熊谷 震災前はほとんど見られなかった関係性です。
 
藤沢 こうした取り組みを生み出す人たちは、震災直後から地域貢献している人ばかりなんですよ。そういう活動の中で、中や外との新しい関係性ができてビジネスチャンスが生まれている。ちょっと楽観的かもしれませんが、そういう地域のつながりが継続的なビジネスを生むとことになると、私は信じています。
 
熊谷 このあたりが、藤沢さんも私も言ってきた、震災前から抱えている課題の解決に直結するところですよね。震災前は、それまで目を向けていなかった資源を活用した商品開発や特産品づくりにチャレンジしても、なかなか横につながらなかったり、足の引っ張り合いをするようなケースも多々ありました。
 
藤沢 地域に貢献して、時には自分のノウハウも出しながら地域全体で良くなっていこうという動きが、随分と出始めていますね。
 
熊谷 地元でよそには真似のできない付加価値をつけて、東京や海外で高く買ってもらえるという、こういう流れがうまく回り始めるといいなと思います。
 
藤沢 これまでの復興政策は、壊れたものを元に復旧するまでで、新しい取り組みには予算を使えないところがありました。今必要なのは、単に外形的に戻すのではなくて、小泉政務官が「人の復興」を強調されているように、人に着目しながらコミュニティをつくるとか、地域の経済循環をつくるという観点だと思います。
 
熊谷 とても重要な視点だと思います。そこに、どのような支援が考えられるでしょうか。
 
藤沢 補助金の受け皿としてつくった団体では、お金が切れれば消えてしまいますね。逆に、本気な団体はお金のあるなしに関わらず、地域と結びついています。
 
熊谷 予算をもらうとか、消化するとかとは、まったく違う関係性ですよね。
 
藤沢 4年経ち、本気の団体は100程度に絞られてきました。どこに支援すれば効果的かがはっきりしていますね。丁寧かつきめ細かなサポートをしつつ、つながりを深めて親和性を高めて、新しいものを生み出していくことですね。
 
熊谷 復興と違うところで、行政の最小限の予算とコアにして、地域の金融機関や担い手を結びつけて、地域の資源を循環させるという取り組みをしているんですね。そういう仕組みが、被災地でも動かしていけたらいいなと。
 
藤沢 そういう意味では、被災地にとって今は大きなチャンスだとも言えますよね。
 

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